法定12ヶ月点検の時期を迎え、毎年恒例の集中整備シーズンとなった。
走行を支える足回りの経年劣化が無視できないレベルとなり、ホイールアライメントが正しい位置(値)に保てないほどの状態に陥った。原因はサスアームに組み込まれているゴムブッシュの劣化で、ボルト用の穴が正しい位置からズレてしまっており、解決方法は交換するしかない。部品が出ているうちに手をつけるとして…、手段と方法を考えてみた結果が下記のとおり。
∧低コスト
│ 1.純正サスアーム一式を交換することで、ブッシュをリフレッシュ。
│ 2.ショップに依頼して、現車のサスアーム脱着してブッシュの交換(打ち換え)をする。
│ 3.強化ブッシュを打ち込んだサスアームと交換する。
∨高コスト
・1について…
16年199,000kmを耐えた実績からも、低コストかつ最も確実。サスアームとブッシュが、完全な新品に戻る。整備先で部品を注文するため、確保や処分は任せればいい。同時に部品の在庫状況をある程度知れることからも、長期維持対策の点では有利。
・2について…
よく目にするパターン。贔屓にしているショップでの作業となり、無限製の強化ブッシュとの交換になる。時折交換キャンペーンが行われるので、そのタイミングで注文すれば費用をだいぶ抑制できるが、基本的にキャンペーン待ち。勤務の都合もあって、交換予定を組みにくいのが難点。
・3について…
決定案。最も高コストとなってしまうが、理由は下記のとおり。
大阪に存在するサージェント レーシングディビジョン
(以下、サージェントRD)というショップでは、下取りしたサスアームのブッシュを無限の強化品に交換し、しかも再塗装済みという設定で販売している。
無限のブッシュに交換するという点では2番案に近いものがあり、そして再塗装済み!これが選択に至った最大の要因。ボディの防錆塗装は念入りに行っているのに、サスアームは完全に手付かず。ボディと同じく過酷な使用条件で、サビと汚れは全く除去されず、朽ちていく現状を対処したかった。公式サイトは長らく更新されておらず、販売状況は分からなかった。
サージェントRDに問い合わせてみると「オーダー可能」と嬉しい返事あって、さっそく注文に至ったが、後述するある部品だけは、同じタイミングで揃わず、後日発送になるとのこと。法定12ヶ月点検のタイミングに合わせるため、了承。
いいこと尽くめだが、一台分のサスアームが配送されるのでそれなりの送料を要し、同時に一時的な保管スペースを要する。自ら整備先に持ち込んでの交換となり、さらにアライメント調整を行うので、交換工賃や調整料金が加算される。そして取り外したサスアームはサージェントRDに返送せねばならず、やはり送料が掛かってしまう。これらが積み重なっていくことから、高コストになる。
一部の部品以外はメーカーに在庫(但し少)があって、納期は半月。11月末、待ちに待って、ようやく品物が届いた。
子供のように、梱包材を取り払う。
段ボール箱の上部には、リヤトレーリングアーム以外のサスアームが収められている。
段ボール箱の下部には、最も大きいリヤトレーリングアームが鎮座。
収められていたアーム類を出してみる。心が妙に躍るこの瞬間がたまらない。
注文した時点で、リヤのロアアームブッシュがメーカー欠品となっていて、これが同一タイミングで揃わなかった唯一のパーツ。
メーカーからブッシュがサージェントRDへ入荷し、それから一括で発送してもらうと納期は12月中旬以降。法定12ヶ月点検の日には間に合わず、車を整備工場へ持っていくためには会社を最低2回休まなければならず、結果として納期と作業日を優先させるために、ロアアームだけは後日配送というカタチを取った。
ロアアームだけを改めて交換するとなると、整備工場やディーラーだと工賃が余計に発生し、DIYだと油圧ジャッキに不安が。
そこで、ロアアームだけ百式自動車
で売られている、強化ブッシュを組み込んだロアアームを別途購入し、装着することにした。後から配送されるロアアームは、予備品としてストックしておく。
見た目は武器(鈍器)そのもの。左右とも同一品で、片方を裏返した格好で車体に装着する。つまり、今回のブッシュリフレッシュ作業は、無限と百式自動車のコラボとなった。
フロントアッパーアームのボールジョイントブーツは、新品に交換されていた。
1980年代後半から90年代末までのホンダ車にとって、泣き所となるのがこのリヤのトレーリングアームブッシュ。ねじれるようにして動き、しかも大きなブッシュであることから、ヘタりやすい。無限の強化ブッシュの耐久性はいかに。
再塗装され、美しく輝くトレーリングアーム。その他のアームも、同じように再塗装されている。トレーリングアームについているリヤスピンドル(後輪軸)は、本来は現車から移植する必要がある。リヤスピンドルは部品単体での設定がなく、基本的にはトレーリングアームASSYごととなってしまう。(同様に、トレーリングアームブッシュ単体の部品設定が(一応)ないことは有名な話。)
ところが、運よく新品未装着のスピンドルが単体で入手できた。
現車から取り外した古いサスアームは、サージェントRDへ返送する。古いサスアームは曲がりや破損の点検をして、次のユーザーが購入した際に使われる。
この下取りシステムが確立されているおかげで、今回購入したリヤロアアーム以外のサスアームは、どこかのEK9オーナーが使った実質中古品ということになる。ウチに来る前はどういう使い方をしていたかは不明で、塗装の下でクラックの有無やダメージについては全く見当が付かない。もしそのような事例があるなら、早い段階で判明している。ネガティブな要素は一切なしと判断するしかない。
| サージェントRD | EK9強化B/C圧入アームKIT | 123,000円 | 1式 |
| 百式自動車EK-030 | 強化ブッシュ組込済みリヤロアアームEK用 | 13,830円 | 1式 |
| ?????-???-??? | リヤスピンドル(ナックル) | 24,800円 | 1式 |
その他の交換部品
リヤサスペンションアームの完全分解に伴い、同時にリヤハブベアリングの交換を行う。サーキット走行歴があるのに、200,000kmを目前にしても異常は一切起きておらず、寿命が全く見えないまま取り外されることになった。
| 42200-S03-C51 | ベアリングASSY.,リヤーハブユニット | 26,000円@13,000円 | 2個 |
| 42324-SB2-020 | ワッシャー,ハブユニット | 1,220円@610円 | 2個 |
| 42326-SLJ-000 | キャップ,ハブユニット | 540円@270円 | 2個 |
| 90305-692-010 | ナット,スピンドル(22MM) | 1,680円@420円 | 4個 |
| 93600-06014-0H | スクリュー,フラット 6X14 | 120円@30円 | 4個 |
ロックナットが4個となっているのは、フロント側のナックルを外すかもしれないことによる事前調達。皿ネジ(フラットスクリュー)はリア分のみ。その他、割りピンや消耗したナットやボルトが発見された場合は、その都度整備工場側に準備してもらうことになった。
整備作業
タイヤを外し、整備スタート。
199,000kmを支えたリヤサスアーム一式。
フロントサスアーム一式。今となっては希少な、ダブルウィッシュボーンタイプ。
まずはリヤ側。ブレーキとハブASSYを取り外し、バックプレートを取り外しているところ。
露出したリヤスピンドル(ナックル)。本来なら移植を要する部分だが、新しいスピンドルがあるので廃棄となる。よく見ると、ベアリングの内輪と接する軸部分にサビがある。表面だけのサビだろうが、使い続けても大丈夫だったのだろうか。
サスアームが取り払われ、スッキリしたタイヤハウス部。本来のアンダーコートがだいぶ脱落している。機会があったら再塗装だ。
カチカチに硬くなり、ヒビだらけになったトレーリングアームブッシュ。これではサスの動きが悪くなる。
怪しい輝きを放つ新品スピンドルと、黒い艶が美しいサスアームがセットされた。
ハブASSYとブレーキローター、ブレーキキャリパーを装着。見慣れた姿に戻った。
新旧比較。
今しか見れない、ピカピカのハブASSY。ベアリングのメーカーはもちろんNTN。
続いて、フロント側。いきなり新旧比較。ボルトが固着していたようで、WAKO'Sのラスペネが大活躍。
油圧ジャッキで車体重量を掛けながら、ボルトを締めていく。
あっという間に交換された、アッパーアーム。
交換が終わった助手席側と、作業待ちの運転席側の比較。普段は見えないところだけど、キレイな部品になることは気分がいい。ここまでの作業は、入庫から半日での出来事。ここで一区切りとなった。
翌日は、作業の仕上げとなる。四輪のサスアームを完全にバラしたことから、ホイールアライメントを調整する。
サスアームのブッシュが新品になったおかげで、いい位置(値)になった。以上で法定12ヶ月点検と、全サスアームの交換作業が終了となる。
〆
法定12ヶ月点検そのものは、全て良好。では、サスアームのリフレッシュ効果はどうか。整備工場を出て、しばらく市街地を走ってみる。フニャフニャした乗り心地が無くなって、路面の細かい凹凸をよく拾い、多少足回りが硬くなった印象を抱く。これがいわゆる「シャッキリとした乗り心地」のことだろうか。
続いて、高速道路を走ってみると、違いがより明確に体感できた。高速道路特有の緩いカーブでは、フラフラしたロール感がなくなり、速度と横Gがつり合って軽やかに走れる。フラフラ感が減ったことは直線区間においても好影響があって、修正舵を当てることが激減した。足回りがしっかりと動くおかげで、ボディの硬いハコ感が明確に増す。
製造から16年、距離にして199,000kmを走破したことから、ボディがやれてきたと思っていたが、実はブッシュの劣化が原因だったようだ。ホンダ自らが行ったボディの徹底強化策が、ようやく実感できた。全体の費用としては安価ではないが、劣化したブッシュをリフレッシュすることで、車本来の味わいを取り戻せた。月へ向かうこのシビックR、まだまだ走れると確信。
走行距離:199,006km