都心で雪が降り、そんな中を走り回った翌日。いつものように始業点検でボンネットを開けた際、エンジンルームの汚れだけでなく、冷却水特有の甘いニオイを嗅ぎ取った。すぐにチェックすると、エンジンブロックの側面(オイルエレメント側)が白い汚れで覆われていることに気づく。
冷却水が乾くと、こうして白い斑点が残る。
ラジエターリザーブタンク内の冷却水は残り僅かで、ひとまずMAXラインまで補充。続いてエンジンを始動すると、甘いニオイが一層強まる。すぐに一部のホースが水気を帯びるようになり、冷却水の漏れ部分はある程度特定することができた。
写真中央、ヘアピンカーブのようにU字型に大きく湾曲しているホースが、漏れ部分があると思われるバイパスアウトレットホース。漏れた冷却水で、見た目の色が変化している。
実際の目視点検では、次々に落下する滴まで見ることができた。後の調査でバイパスアウトレットホースからの漏れで正解。ゆっくりとした漏れではなく、エンジンの回転に応じて漏れ方が変わり、高回転では噴出するように漏れていたとのこと。
交換範囲を決める
総走行距離が34万キロに到達し、油脂類の定期交換でディーラーへの入庫を控えたタイミングで発生した、冷却水漏れトラブル。予め、冷却水漏れが発生、自走可能、このまま修理を希望する旨を連絡しておき、部品の交換範囲の打ち合わせに入る。
修理費と修理期間が最も抑えられるのが、漏れたホースだけを交換するパターン。しかし工場での製造から23年、もう少しで24年目に入る経過年数を考えると、他のウォーターホースにも劣化による冷却水漏れのリスクがある。この先、当面は運用が続くことから、入手可能なウォーターホースは一斉交換とした。
I.エンジン周辺
エンジン本体を取り巻くウォーターホースは、赤い丸で囲った合計7本。今回の冷却水漏れ原因箇所が、図中3番のU字型に描かれているホースだ。この中で、塗りつぶしている5番と6番は前期型と後期型で微妙に部品番号が異なるが、共に欠品となっていて入手不可能と判明。
| 1. | 19506-P75-000 | ホース,エレクトロニックエアーコントロールバルブ インレット |
432円 | 1個 |
| 2. | 19507-P73-000 | ホース,エレクトロニックエアーコントロールバルブ アウトレット |
1,078円@539円 | 2個 |
| 3. | 19508-P08-000 | ホース,バイパスアウトレット | 869円 | 1個 |
| 8. | 95002-41250-04 | クランプ,チューブ(D12.5) | 330円@55円 | 6個 |
| 10. | 19422-PR3-000 | ホース,オイルクーラーインレット | 1,023円 | 1個 |
| 11. | 19423-PR3-000 | ホース,オイルクーラーアウトレット | 1,023円 | 1個 |
| 12. | 19512-PC6-003 | クリップ,ホース 18.7MM | 900円@225円 | 4個 |
図中2番における、19507-P73-000 ホース,エレクトロニックエアーコントロールバルブアウトレットは2本となっている。追加されたもう1本は図中5番の代用で購入しており、現物に沿って切断加工し、転用しているため。
アウトレットホースのR部分を残し、長い部分(写真右側のストレート部分)を切断すれば、図中5番の代用として使うことができる。この記事を参考にして、本当に加工、装着するのであれば自己責任で行うこと。
スロットルとEACVを結ぶ図中1番のインレットホースは、2016年2月のラジエターキャップ破損トラブルでダメージを受けており、圧力に負けて膨張している。切り口は歪んでしまい、冷却水が滲み出るようになった。後ほどホースバンドを追加で装着していたが、漏れを完全に止めることはできなかった。
II.ヒーター周辺
ウォーターホースはエンジン周辺だけでなく、車内暖房用のヒーターにも使われている。やはり経年劣化対策で一斉交換を行うつもりでいたが、ヒーターからエンジンへ戻るアウトレットホース(図中4番)が欠品で、手配ができなかった。
| 1. | 79710-SR3-A01 | バルブASSY.,ウォーター | 3,509円 | 1個 |
| 2. | 79721-SR3-J30 | ホースA,ウォーターインレット | 1,485円 | 1個 |
| 3. | 79722-SR3-000 | ホースB,ウォーターインレット | 451円 | 1個 |
| 7. | 19513-PE0-003 |
クランプ,ウォーターホース(24MM) | 880円@220円 | 4個 |
| 10. | 90361-SV4-003 | ナット,ペイントカッティング6MM | 115円 | 1個 |
図中1番の79710-SR3-A01 バルブASSY.,ウォーターは、エアコンの冷風/温風切り替えで動作するバルブ。車内暖房時や冷たすぎない冷風を作る際に、内部の弁が開いて冷却水をヒーターコアに通す。ここも高温高圧になった冷却水が通過する部分なので、ウォーターホース同様に経年によるストレスを抱えていると思われる。各インレットホースの脱着に併せて、同時交換部品に追加された。
III.ラジエター周辺
冷却水用ウォーターホースといえば、真っ先に思い当たるのがラジエターに接続するアッパーホースとロアホースだろう。こちらは2013年9月1日に行ったEACVの交換作業で併せて取り換えているが、今回のリフレッシュ作業に便乗。2回目の交換となった。
| 7. | 19501-P30-000 | ホース,ウォーターアッパー | 2,959円 | 1個 |
| 8. | 19502-P30-000 | ホース,ウォーターロアー | 3,905円 | 1個 |
| 3. | 79722-SR3-000 | ホースB,ウォーターインレット | 451円 | 1個 |
| 9./10. | 19511-PH7-003 | クリップ,ホース | 1,100円@275円 | 4個 |
作業中、ラジエターアッパーホースがラジエターのホース取付口に固着していることが分かり、なんとかして外そうと力を加えたら、ホース取付口が割れてしまう事象が発生。
通常なら、補償問題に発展するのだろうか。旧い車を診てもらっているだけでも十分で、こういった事象は常に覚悟しているスタンスだ。取付口の破損に関するクレームは一切口にせず、手元でストックしていたラジエターとそっくり交換してもらうことで対処してもらう。
作業依頼特記事項
ディーラー側から見ると、飛び込みでの作業依頼となる以上は予約車を優先することになり、どうしても作業着手は後回しになる。
よって入庫時点で「完成まで時間はかなり要すると思われる」「どれくらい日数が掛かるかは分からない」と告げられていた。
図面付のパーツリストを持参するか、ホンダのオンラインパーツリストを印刷してもらい、現物と照合しながら交換部品をチェックする。旧い車ゆえ、ディーラー側も交換部品の見落としが発生する。
以上、各ウォーターホース交換工賃は、値引きして端数を揃えてくれた事情もあるが、想像以上に安価で済んだ。後述するオイルクーラー周辺やヒーターホースの交換の手間を考えると、極めて格安と捉えることができる。
交換作業完了
入庫から12日が経過し、作業完了の連絡が入った。外された部品と共に、無事に車が返ってきた。さっそく交換された部分をチェックする。
冷却水が漏れていたU字型のバイパスアウトレットホースを見る。交換されてキレイなウォーターホースになった。印刷された数値は製造年月日と思われ、2021年9月6日だろうか。そうすると製造から5ヶ月で出荷、装着されたことになり、現在でも製造が続いていると想像できる。その下にあるホースはヒーターからのアウトレットホースで、こちらは欠品で未交換となった。
新品になったラジエターアッパーホース、ヒーターインレットホース。これらも2021年製造品と思われ、保存中の劣化を考えなくて済む。
バルブASSYとヒーターのインレットホースBは新品。ホースクランプの向きから、ウォーターホースを外すときは下回り側からアクセスし、装着は上から行ったようだ。アウトレットホースは未交換となるため、ホースクランプは下を向いたまま。
オイルクーラーに繋がる2本のウォーターホースもリフレッシュされた。先のU字型のバイパスホース同様、曲げ半径が小さく成形されている部分だったので、次に漏れるとしたらこの2本だろうと考えていた。ウォーターホースの装着部分の下をカバーするかのようにオイルエレメントが存在し、この部分の作業が最も大変だったのではないか?と感じる構造。
インマニから伸びるブリーザーヒーターホースAは欠品。そこでEACV用のアウトレットホース…19507-P73-000を切断加工することで、全く違和感なく装着することができる。
新品になったEACVのインレットホースは、凹凸のないスッキリとした本来の姿になった。圧力負けでボコボコに膨張していた外観が、如何に異常だったか分かる。
損傷部位確認
冒頭でも書いたように、冷却水漏れを起こしたホースは『バイパスホース』と呼ばれる部分。水温が低くサーモスタットが閉じているときは、ウォーターポンプから押し出された冷却水をラジエターに流さず、エンジンブロックに戻す役割がある。
穴が開いて冷却水が漏れた19508-P08-000 バイパスアウトレットホースの全体像。全長は40cm程度で、U字型にカーブを描くようにして成形されている。矢印の位置で穴が開いていた。
表面では5mm程の穴が裂けるようにして開いている。ホース内部の補強繊維まで浸水しているようで、水気とクーラントのニオイが感じられる。
穴から離れた位置で切断し、ウォーターホース内側をチェックする。内側では大きなヒビが入っており、表面のゴムだけで冷却水の圧力と温度に耐え続けていたようだ。そのストレスに耐えられなくなって表面が裂けてしまい、冷却水が漏れてしまったと考えられる。
ホース壁面内部に織り込まれた補強繊維まで切れていることが分かる。経年で生じた僅かな損傷が水流と水圧を受け続けることで、少しずつ傷口を広げていったのかもしれない。
ホース壁面の様子。細かいヒビが生じているようにも見える。損傷部分からホース内部の補強繊維に浸水が生じたことで、吸い込んでいた冷却水が滲みだしている。参考として、補強繊維は水を吸ってしまうと強度が落ちる特性がある。
…と、損傷部位を見てきたところで、最も分かりやすい結論は『経年による劣化、損傷』だろう。水温は氷点下から100℃以上まで変化し、ラジエターキャップで大気圧以上の高い圧力が掛かっている。柔軟性のあるゴムホースでも、製造から23年以上が経過したことで、老朽化が進んでいた。
もう一つの損傷部位であるEACVのインレットホース。こちらは経年による劣化ではなく、ラジエターキャップの不具合による過圧状態が続いたことによるもの。写真では分かりにくいが現物はボコボコになっていて、エンジン動作中の熱せられた冷却水が通っている状態では軟化を起こしていた。
本来なら膨らみや歪みがない状態のホース(例:下)だが、過剰な圧力と熱を食らうと変形してしまい、ゴムであっても元に戻らなくなるようだ。
口金と接続する切り口部分も、歪んで拡大している。正常な切り口(左)と比べると、その違いはよく分かる。これではホースバンドで縛っても隙間が残ってしまい、冷却水が滲み出てきてしまう。
〆
エンジンにはウォーターホースが多数装着され、装着部分に応じてサイズが変わってくる。それでいて温度と圧力は均等に掛かるものだから「経年で何かしらのホースに穴が開いて、冷却水が漏れる」と警告されていた。前触れなく冷却水漏れが起きたことは驚いたが、事前警告のおかげで納得すらしていた。
ウォーターホースの一部に欠品が判明し、完全リフレッシュはできなかった。こうなることを見越して、B16B/EK9用のウォーターホースは全てストックがあったりする。ゴールとなる38万キロまで残り4万キロ少々。残りの走行距離とこの先の運用パターンを考えてストック品は投入せず、新品で買える部分の交換に留めておいた。
欠品で交換できなかったホースは、冷却水の漏れが起きていないか監視を継続する。代替手段を考えておき、交換の目途が立ったなら作業着手できるよう、常に準備しておくことになった。
走行距離:340,034km