シビックRの目標は384,400kmを走破すること。第一目標は「月までの半分となる192,200kmに到達すること」で、こちらは2014年6月9日、北海道を走行中
に到達した。第二目標として「アポロ13号の事故地点、321,860kmに到達」を設定し、さらに走り続けていく。
計算によると2,457日が経過している。これだけの日数が経過したことで、周囲の車や交通事情はだいぶ変わったが、やることや基本は同じ。安全運転に徹すること。
そして目標となる321,860kmに到達した。一日の平均走行距離は相変わらず50km少々を保ってきたが、この先の走行プランは全く見通せず、完全にコロナ禍次第。
事故地点はもう少し先?
アポロ13号の事故地点として321,860kmとしたが、月惑星研究所
とNASAのレポートページ
を読んでいたところ、事故地点は共に『200,000 miles from Earth』と掲載されていたことに気づく。このマイルが陸上系マイルなのか航海航空系マイルなのかは分からないが、ひとまずメートル法に換算してみると321,868kmと出るので、もう少し走ることになる。
アメリカの宇宙飛行計画だけに、米国慣用単位たるポンドヤード法を全面的に使用しており、メートル法による数値に換算して8kmを追加。これで正式にアポロ13号事故地点到着とした。
アポロ13号について
事故地点目標にしていた、アポロ13号について少々。
アポロ13号は1970年4月11日にスタートした、三度目の有人月面着陸計画。打ち上げから数分後、5基あるエンジンのうち1基がタービンブローを起こして燃焼停止。宇宙に出てから一日半後には、搭載していた液体酸素タンクの残量表示エラーが出るというような故障が起きたが、飛行を中断するようなレベルではなく、計画どおりに順調に進む。
液体酸素タンクの残量エラーは、特に地上管制室側で正しい数値が把握できないことに悩まされた。そこで正しい数値を表示し直すため、液体酸素を撹拌するよう指示を出した。打ち上げから55時間55分後のことだった。地上管制室からの指示で撹拌スイッチを操作し、その16秒後。船体が突如振動し、同時に船内に爆発音と金属音が響き渡った。
さらに計器パネルにある警告灯が次々に点灯していく。"Houston, we've had a problem(ヒューストン、何か問題が起きたようだ)."電力供給系統の停電、不規則な回転をし始める船体、急激に減っていく酸素の残量。地上管制室、宇宙飛行士共に、何かが起きたらしいとしか分からず、時間だけが過ぎていた。
計器の故障か?いや、どうも違う。宇宙船の窓から外を見ると、薄い靄のようなものが船体の周囲に広がっていることが分かった。どんどん減っていく酸素の残量メーターの様子から薄い靄の正体は酸素で、これは計器の故障ではない。隕石と衝突したのかもしれない。
船体に隕石が当たったかはともかく、何らかのトラブルが起きて、酸素漏れが発生したことが分かった。酸素は宇宙飛行士の呼吸用ではなく、発電用の燃料電池を動作させるための物質でもある。燃料電池が機能することで、宇宙飛行士が口にする水も生成する。その酸素が無くなってしまえば、三人の宇宙飛行士が酸欠と乾きで死ぬかもしれない。このままでは安全な月着陸はできないと判断され、計画中止。地球へ緊急帰還することにしたが、問題はどう戻るか。時速3,000kmを上回るスピードで月に近づきつつあり、しかも月の引力で速度が増し始めようとしている。
ここでメインロケットエンジンを全開噴射してブレーキを掛けて、地球へ戻るために再加速をしようと考えたが、宇宙船の詳しい状況がつかめないまま、エンジンに点火するのは危険ではないか?という懸念が出て、月の引力を利用してグルリと回る遠回りコース…『自由帰還軌道』を選ぶ。
自由帰還軌道を使うことで、月は宇宙船を地球へ向かって「放り投げて」くれる。しかし遠回りなコースを選んだことで、地球帰還までは4日も要することになった。
当初はこの4本足の宇宙船…月着陸船に2人が乗り込んで月面を探査し、月上空では母船を1人で操縦しながら、周回観測する計画だった。
月着陸船は月面探査用に酸素や水といった物資が独立して積まれており、完全に正常なエンジンも備わっている。そこで救命ボートに見立てて、トラブルが起きた母船から避難。月着陸船を使い、3人の宇宙飛行士を緊急帰還させるプランがスタートした。
月着陸船は2人乗りで、生命維持は48時間が限度。船内は電話ボックス2つ分もない空間で、宇宙と隔てる壁はアルミホイルと変わらぬ厚さの部分もある。
訓練用シミュレータだが、アポロ月着陸船の狭さが分かる写真。軽量化のために椅子はなく、サスペンダーで緩く縛られているとはいえ、月への着陸及び離陸においては立ったまま操縦する。
こちらも訓練用シミュレータ。宇宙飛行士は右側に立っている。男性二人が横並びに立つと、それだけでいっぱいになってしまう。
二人乗りかつ自由に身動きが取れない船内に、三人の宇宙飛行士が詰め込まれ、144時間も機能させなければならない。徹底的な節約術が行われた。まず節電のためにヒーターは使えず、食料や水も温めることができない。船内の室温は4℃以下になり、寒さで眠ることができない。月面で飲むはずだった水も多くはないため節水せねばならず、宇宙飛行士全員が脱水症状に陥った。
軌道修正は宇宙飛行士の目測、エンジンの噴射時間チェックは機械式腕時計、形状の異なる二酸化炭素除去用のフィルターを流用接続するため、宇宙服用のホースと靴下、粘着テープ、ボール紙やビニール袋で接続アダプターを作る。アナログかつその場にあるものを使うことで、次から次に発生する問題に対処し続ける。
地球が近づき、月着陸船から大気圏再突入用の母船に戻り、不要になった部分を切り離す。ここで初めて、宇宙飛行士と地上管制室は、船体の外壁が失われていることを知った。予測されていた隕石の衝突ではなく、船体側内部から損傷が生じたことを即座に感じ取った。続いて救命ボートとなった月着陸船も切り離し、別れを告げる。
地上管制室から、アポロ13号が着水する瞬間をライブ映像で見ている様子。最後まで問題を抱えながらも、3人の宇宙飛行士は17日の正午、地球へ帰ってきた。月着陸計画そのものは失敗したが、無事に生還したことで「成功した失敗」と称えられることになった。
後の事故調査でたった1本のボルトの外し忘れ、使用部品の間違い…電源電圧変更の伝達ミスが事故原因だったことが判明する。爆発部分は2基ある酸素タンクの、第2タンク。これで第1タンクも損傷し、酸素が宇宙空間へ流出してしまうことになった。状況を揃え直して再現実験を行ったところ、船体の外壁が吹き飛ぶことが確認された。
酸素タンクが爆発したことで、外壁が吹き飛んでしまった船体。しかし、外壁が外れたことで爆発圧力が宇宙空間に逃げ、宇宙飛行士の居住空間へのダメージが及ばなかったのは不幸中の幸いだった。
ジーン・クランツの10ヶ条
地上側の飛行主任管制官だったジーン・クランツ氏は、宇宙飛行だけでなく仕事にも役立つ10ヶ条を示している。
1.Be proactive(先を見越して行動せよ)
2.Take responsibility(自分の担当は自ら責任をもて)
3.Play flat-out(目標に向かってやり通せ)
4.Ask questions(分からないことは質問せよ)
5.Test and validate all assumption(考えられることはすべて試し、確認せよ)
6.Write it down(連絡も記録も全て書きだせ)
7.Don't hide mistakes(ミスを隠すな)
8.Know your system thoroughly(システム全体を掌握せよ)
9.Think ahead(常に、先を意識せよ)
10.Respect your teammates(仲間を尊重し、信頼せよ)
シビックRの維持に関し、早くからこの10ヶ条に沿って行動計画を立ててきた。38万キロの行程で何年も要する計画なのだから、先を見越してリフレッシュしておく、パーツを確保しておく、サービスマニュアルを入手、ディーラーと会社自動車部に頼るといったことに繋がっている。
最終目標に向けて
走行チャート図上でも、だいぶ月まで近づいてきたことが分かる。ゴールとなる384,400kmはまだ先の位置にあり、ここから62,540kmを走らなければならない。とはいえ非現実的な数値ではなく、安全運転の積み重ねで到達できる距離。訪れたことがない場所はまだまだあるので、変わらず楽しむことができる。
エンジンは目立つオイル消費や異音はなく、吹け上がりも良好。現状で満足することなく、これから先のことを考えて、次なるプランはセッティング済み。これが『先を見越して行動』『先を意識する』に繋がってくる。
アポロ13号の事故から学べるものは非常に多い。それくらいなら大丈夫という思い込みや情報の食い違いといった小さな事象が、後々大きな問題を引き起こすオチは、決して他人事ではない。
走行距離:321,868km
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