リアトランクには予備用のテンパータイヤがセットされていて、標準タイヤがパンクしたときには交換することで、走行を継続することができる。普段なら見向きされず、軽量化や邪魔という理由で取り外されることもあるタイヤだが、実際にパンクして使用したことがあり、装備されている旧車ならではのありがたさを痛感している。

タイヤの穴

一回目のパンクは、サーキットでのスポーツ走行時。グラベルゾーンに落ちた際に小石が貫通してしまい、溝に穴が開いてしまった。

タイヤの穴

テンパータイヤに履き替えて、とりあえずはサーキットから自走で引き上げることが可能になった。初めて見たそのダサい姿ゆえに笑いが止まらず、交換作業が進まなかったほどだ。

バーストによってテンパータイヤに

二回目はショップの代車。首都高湾岸線の大井入り口付近でバーストしてしまい、路肩で交換するハメになった。

ハタチ越えのテンパータイヤ、交換へ

このように、通常タイヤがダメになってもテンパータイヤがあったことで、その場で交換して無事に帰宅することができている。ただ、リアトランクという暗所とはいえ、20年前のタイヤだ。経年で自然と破裂してしまう事例があり外部リンク:世界最小のスーパーカー(笑)AZ-1のページ、使おうとしたら破裂していた、もしくは使った途端に破裂してしまえば、いきなり二本のタイヤが失われてしまい、自走不能に陥ってしまう。

目標としている月面到着は、まだまだ先の話。経過していく年数による劣化の心配だけでなく、酷道やダートといった悪路を好き好んで走るため、この先もパンクしないとは限らない。20年オーバーのテンパータイヤを交換しておき、万一のタイヤトラブルが発生しても走行し続けられるよう、備えを一新しておくことにした。

テンパータイヤの部品番号
6.  42751-SV4-907  タイヤ(T125/70D15 95M)  12,830円  1個

テンパータイヤには部品番号があるが、タイヤサイズで注文をすれば、タイヤ専門店でも交換できるようだ。形状や用途が少々特殊なだけで、結局はタイヤだ。購入価格、交換工賃は店によって大きく変わってくる可能性がある。

テンパータイヤとスペアタイヤの違い

テンパータイヤと同じ意味で用いられるのが、スペアタイヤという言葉。両者は厳密には異なるタイヤで、テンパー…間に合わせ、一時的なという意味から、先の写真で掲載した通常タイヤとは異なるタイプのタイヤとなり、スペアタイヤの場合は通常タイヤと同じホイールとタイヤを組み合わせた、予備(=スペア)タイヤとなる。

本来の意味のスペアタイヤ

スペアタイヤの例。四輪と同じホイールとタイヤをリアゲートに背負っている。かつてのクロカン車で、よく見られた装着方法だ。テンパータイヤとは見た目からして異なり、本来の意味をしっかりと伝える必要があることから、当レポートの表記はテンパータイヤで統一している。

テンパータイヤの交換前後

結論から書くと、搭載している20年モノのテンパータイヤと同一のタイヤに交換された。つまり、メーカーでは20年に渡ってモデルチェンジが行われることなく、製造し続けられていることが分かった。

EKシビックのテンパータイヤの格納状態

トランクのフロアに格納された状態のテンパータイヤ。裏返して皿状にすることで、そこにパンタジャッキとタイヤレンチを収めるようになっている。

ブリヂストン製のテンパータイヤ

メーカーはブリヂストン。パーツリスト上ではダンロップ製のテンパータイヤも設定されていたことから、工場での製造タイミングによってはダンロップ製に変更されていたのかもしれない。

テンパータイヤのブランド名

テンパータイヤにはTRACOMPA-3というブランド名が設定されている。ブランド名の下にはタイヤサイズが表記してあり、T125/70D15 95Mとなっている。それぞれのアルファベットは、Tはテンパータイヤ、Dはバイアス構造、ロードインデックスは95となっていることから690kgと高く(標準タイヤは85=515kg)、速度記号のMは130km/hを示している。

TEMPORARY USE ONLY

タイヤにはTEMPORARY USE ONLYと表記されている。応急用だけに、一時的な使用のみという和訳そのままだ。

製造年週

最も気になるのが製造年週。3桁表示となっていて、これは1999年以前に製造されたタイヤとなっているため。148となっており前2桁の14が週、後1桁の8が年(西暦)の下1桁で、1998年14週(1998年2月下旬から3月上旬)製造となる。20年越えの古タイヤだ。

テンパータイヤの空気圧は高い

高いロードインデックスを支えるべく、空気圧は標準タイヤの2倍近く高い、420kPa(4.3kgf/cm2)に設定されている。所定の性能を維持するため、標準タイヤだけでなくテンパータイヤの空気圧にも気を使いたいところだ。

テンパータイヤのトレッド面

テンパータイヤのトレッド面。スリップサインまで僅かしかないが、通常使用は考えられていないタイヤなので、この程度の溝しかない。一度使っているが、サーキットスポーツ走行でパンクした後、現地近くのガソリンスタンドで穴を塞いでもらったため、この時点での使用距離は4km。表面の緑線やイボイボが残っている。

トランク内の木製ボードの下に固定されていて、基本的には暗所保管となっている。タイヤ劣化の主要因となる太陽光(紫外線)はシャットアウトできているので、トレッド面のひび割れや硬化といったトラブルは発生していなかった。

新品のテンパータイヤ

こちらが新品、交換したてのテンパータイヤ。高い空気圧に耐えられるよう、エアバルブも新品に交換している。製造年週は2018年2週(2018年1月上旬)で、長期在庫品だったようだ。メーカーでは、製造から3年以内で適正保管であれば、性能が保てることを公表外部リンク:ブリヂストン タイヤサイトしており、問題になるような在庫年数ではない。

その他、表記類やトレッド面の形状は、先に掲載した旧テンパータイヤと全く変わらないため省略。交換は10分も掛かっておらず、ディーラーの滞在時間も15分ほど。

テンパータイヤで走ってみた

テンパータイヤについては、自動車解説系Webサイトで『最高速度は80km/h、走行距離は100km/hが限度』といった一文をよく目にするが、そんなものは机上の空論と切り捨てて、テンパータイヤで240kmを走ったレポート外部リンク:役に立たないカーライフのDIYが見つかった。テンパータイヤで検索すると、1ページ目にヒットするほど内容が濃く、かつてのテキスト系Webサイトをイメージさせる読み応えのある記事だ。

過去にシビックとアルトの両方でテンパータイヤで走行しているが、運転しにくい、妙に不安定といった違和感を覚えることはなく、印象が極めて薄い。そこで旧テンパータイヤを廃棄する前に走ってみて、どのようなフィーリングか、実際に確かめてみることになった。

新品のテンパータイヤ

まずはテンパータイヤのホイールに貼られた、注意書きのステッカーをよく読んでおく。具体的な数字は100km/h以下での走行、空気圧は4.2kgf/cm2といった二つのみで、制限距離に関する記載はなく『出来るだけ早く標準のタイヤに戻して下さい。』とだけ書いてある。シビックの取扱説明書でも、ほぼ同じことが記されており、やはり距離に関する制限事項はない。

標準タイヤはトランク内に格納

取り外した標準タイヤは、トランクに格納。テンパータイヤを固定していたワッシャーを裏返せば、標準タイヤ固定用のワッシャーに切り替わるようになっている。タイヤの幅が増えるので、木製ボードはタイヤの上に乗ってしまい、フロアからは浮いた状態になる。

<注意>

社外ホイールを使用している場合、ホイールナットはテーパーナットを使用していると思われる。純正のテンパータイヤを搭載しているならば、純正の球面ナット5個を必ず携行すること。テンパータイヤ用のホイールもホンダ特有の構造をしており、球面ナットが必須。テーパーナットでは、固定不良が発生する危険性がある。

</注意>

標準タイヤはトランク内に格納

テンパータイヤのまま、街乗りと霧雨が舞う高速道路を走り続け、朝日に輝く犬吠埼灯台までやってきた。リアタイヤが内側に引っ込んでいて、これだけでも「外から見て不安になる姿」だそうだ。

ここまでの走行では最高速度は100km/h、異常な振動や不安になるような音などの異変は発生していない。テンパータイヤのトレッドパターンによるものと思われるが、トラックやバスの走行音に似た、独特の低い音が微かに聞こえる程度。

標準タイヤはトランク内に格納

FF車なので、テンパータイヤはリアに装着している。FR車ならフロントに装着し、4WD車は装着箇所が指定されているので、それに従うことになる。テンパータイヤは標準タイヤよりも外径が小さいため、非駆動輪に装着する。駆動輪に装着すると、デフへダメージを与えてしまう恐れがある。

FF車でフロントにテンパータイヤを装着している車両を見かけることがあるが、テンパータイヤ側にハンドルが取られ、常に修正舵を当てないと直進できない状態なので、ドライバーと車共々、まともではない。事故に巻き込まれないように車間距離を開けるか、次の交差点をあえて曲がって逃げるべし。

標準タイヤはトランク内に格納

真横から見る。EK9と鉄チンホイールは好きな組み合わせだったりするが、小径のテンパータイヤは別次元。フェンダーアーチとタイヤの隙間が大きくなって不恰好。

標準タイヤはトランク内に格納

後方から見た様子。ちょうどテンパータイヤと標準タイヤの幅の比較ができる。標準タイヤの195mmが頼もしく見えるほど、テンパータイヤの125mmは細い。この細さとグリップ力の不安から、千葉県内のあちこちにある軽いワインディング路では、右カーブはゆったりと走り抜けていた。リア側からブレイクすると、道の狭さからリカバリする余裕がない。

標準タイヤはトランク内に格納

走行距離は300km、冬場の市街地走行から高速道路、ワインディング、しかもウェットな路面もあるという悪条件揃いのテスト走行は無事終了し、標準タイヤに戻した。

トレッド面の内側にあった緑線が消えており、イボイボも小さくなっている。偏った摩耗やひび割れの発生、トレッド面の脱落といったものはなく、慣らし運転が終わった直後のような具合だった。道中では速度記号を上回るスピードが出て、速度計の針が右を向いていた気がするが、ホイールスピンか眠気による幻覚かもしれない?

テンパータイヤでも一応は走れることが分かった。一応というのは、どうしてもグリップ力やロードインデックスのバランスが狂ってしまうので、自然と慎重な運転に切り替えていたことによるもの。摩耗状態からして、東京青森間の700kmレベルでも走破できる耐久性はありそうだ。

ただし、走れるといっても、テンパータイヤでも大丈夫、通常使用に耐えられるわけではない。四輪全てのタイヤがバランスよく性能を発揮することで、安定した走行と安全が成り立っている。テンパータイヤを使えば四輪のバランスが崩れてしまい、事故の危険性が増すことは絶対に忘れてはならない。テンパータイヤのまま走り続けたり、駆動輪に装着するような、何も考えず、何も感じないドライバーが多いために、注意喚起とクレーム対策として『最高80km/h、走行距離100km以内』という具体的な数値が出回るようになったと考えられる。

意外だったのが、新品テンパータイヤの価格。15インチで、細くて偏平率が大きいタイヤだから、そこまで高価ではねぇべと思っていたら、まさかの一万円オーバーの定価に少々驚かされた。そこに交換工賃と、標準タイヤと同様にエアバルブ代と廃棄処分料も追加されてくるので、決して安い買い物ではない。

トランクの木製ボードの下、暗所となる部分に装着されていたことから、20年以上のスタンバイを続けることができていた。旧テンパータイヤは、その経過年数にも関わらず状態そのものは極めて良好だった。このことから、新テンパータイヤを使って丸坊主にしなければ、二回目の交換は考えなくてよさそうだ。

走行距離:298,055km

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