装着しているブレーキキャリパーは、2016年12月の法定12ヶ月点検において交換したものだ。新品となることから、銀色のキャリパーボディが美しかった。次第に輝きが失われていく防食めっきの変化を楽しみつつ、2018年の春。

たまには気合いを入れてホイールをキレイにしようと、ホイールクリーナーを吹きかけていた。ホイールに吹きかけると刺さった鉄粉で紫色に変化し、すっぱいニオイと共に除去していく、あの洗剤だ。作業中、ブレーキキャリパーへ僅かに飛び散った洗剤が付着した瞬間、「しょわぁぁぁぁ…」と洗剤が沸騰する音と共に、アンモニア臭とは違う鼻を突くような悪臭、湯気とは異なる白煙が漂い、色が銀色から黒色へ変化していった。

すぐに異変を感じて、大量の水で洗い落としたものの、ホイールクリーナーで防食めっきがおかされてしまい、荒れ果てたブレーキキャリパーになってしまった。

防食めっきが落ちたフロントブレーキキャリパーその1

直射日光に照らされて明るい灰色になっているが、実際は暗い灰色から黒色に近い変色をしている。制動能力そのものは問題はないが、洗浄ミスで見た目をダメにしたという精神的ショックが極めて大きい。

防食めっきが落ちたフロントブレーキキャリパーその2

日陰側になると、ボロボロになった肌のブレーキキャリパーの様子がハッキリと分かる。

めっきが残っている部分と落ちた部分

防食めっきが残っている部分と失われた部分の差はこのとおり。ホイールの隙間から水を流し込んでいるので、ブレーキピストン側に向かって洗剤が流れた痕跡がある。

具合が悪いリアブレーキキャリパー

こちらはリア側のブレーキキャリパー。フロントに比べても表面の肌の具合が悪く、めっきが落ちるだけに留まらず、肌がブツブツになって荒れている。

粉まで吹いているリアブレーキキャリパー

リアの右側に至っては、白い粉まで吹いている。

ピストン側にはめっきが残る

フロントと同様、ピストン側はめっきが残っていた。運が良かった点は、表面の目視点検ではサイドブレーキ機構へのダメージが見受けられなかったことか。ブレーキキャリパーの肌を荒らすくらいなので、洗剤が内部に入ってしまったら、重大なダメージを負っていた可能性がある。

リフレッシュした部品が、年数が経過する間にどのような変化を起こしていくのか。この追跡調査が、長期維持に絡むテーマの一つとなっていることもあって、ホイールクリーナーで傷んだ全てのブレーキキャリパーを再交換し、もう一度観察をやり直すことにした。

 45018-SM5-000  キャリパーサブASSY.,R.フロント  28,728円  1個
 45019-SM5-000  キャリパーサブASSY.,L.フロント  28,728円  1個
 43018-S03-Z03
(旧:43018-S03-Z02)
 キャリパーサブASSY.,R.リヤー  21,600円  1個
 43019-S03-Z03
(旧:43019-S03-Z02)
 キャリパーサブASSY.,L.リヤー  21,600円  1個

ブレーキキャリパーに耐熱塗装を施して、見た目をごまかすパターンは最初から考えなかった。脱脂や研磨でいくら下地を作りこんでも、素人のDIYレベルでは長時間に渡って塗料をブレーキキャリパーへ定着させることは難しく、少しでも剥がれ落ちてしまうと、何もしない以上に汚らしくなるためだった。

<蛇足>

EK9にホンダ他車種(例:RN1ストリーム)の安いブレーキキャリパーを流用して、費用を抑えるという尤もらしい記述を見たことがあるが、実際は費用の低減と共に制動能力も落ちる。

RN1ストリームの純正ブレーキキャリパーは15インチ用(16CL15VN)ながら、ブレーキピストン径は54mm。対するEK9(17CL15VN)純正のブレーキピストン径は57mm。ピストン径からの面積は、RN1が22.9cm2、EK9が25.5cm2となり、制動トルクはEK9が6.46kg・mに対し、RN1で5.84kg・mと純正比90%の性能に落ちてしまう。
※トルク値は参考値。

同じ15インチ用ブレーキキャリパーながら、「装着できる」のと「使える」では、大きな差がある点に注意。

</蛇足>

メンテナンスサイクルの最適化

2007年に中古車として納車されて以降、ブレーキマスターシリンダーとブレーキキャリパーのオーバーホール、ブレーキホースの定期交換は四年に一度のサイクルで行ってきたが、実際はこれらの重要部分のメンテナンスタイミングがバラバラになっていた。

1年目がブレーキマスターシリンダーとブレーキキャリパーのオーバーホール、2年目にブレーキホースの定期交換、3年目と4年目が何もなく、5年目にオーバーホール系整備、6年目にブレーキホースの交換…という、管理しにくい状態が続いていた。

今回、ブレーキキャリパーの再交換にあたって、メンテナンスサイクルを再設定するには好都合だ。そこで、ストックしていたブレーキマスターシリンダーを使用することにして、本来は2019年12月に定期交換予定だったブレーキホースを前倒し交換。今後のブレーキ系統の集中メンテナンスを一括でできるよう、見直しを行った。

EK9用ブレーキマスターシリンダー

オーバーホールを繰り返しながらも、本体そのものは1998年5月の製造当時から使い続けてきた。更なるオーバーホールの依頼より、ストック部品の在庫整理を兼ねて使うことにした。

新品のEK9用ブレーキマスターシリンダー

こちらが新品のブレーキマスターシリンダー。リザーブタンクやシリンダー本体の具合が、現車のものとはまるで違う。ここ数年の間に部品番号が変更されたようで、46100-S03-Z01から46100-S03-Z02へ変更となった。

ブレーキ配管系のパーツリスト

ブレーキパイプ、ブレーキホースが記載されたパーツリスト。ブレーキホースを交換しなかった場合、図中25番のパッキンワッシャー(パッキン,オイルボルト/46472-568-000、1ブレーキにつき2枚使用)が別途必要になる。

ブレーキの配管はFF車の基本となる『X字型配管』となっており、フロント右リア左、フロント左リア右の組み合わせで2系統構成となっている。

   46100-S03-Z02
(旧:46100-S03-Z01)
 シリンダーASSY.,マスター  28,188円  1個
1.  01464-S03-Z00  ホースセット,R.フロントブレーキ  4,395円  1個
2.  01465-S03-Z00  ホースセット,L.フロントブレーキ  4,395円  1個
4.  01466-S03-Z00  ホースセット,R.リヤーブレーキ  3,087円  1個
5.  01468-S03-Z00  ホースセット,L.リヤーブレーキ  3,087円  1個

以上、ブレーキ系統のパーツを一括で交換することにより、タイミングがバラバラだったメンテナンスサイクルを統一することができた。

その他の交換部品

クラッチフルード用のリザーブタンク内

クラッチフルードについては毎年交換しているが、リザーブタンク内の汚れを排出するまでには至らず、20年分の汚れが溜まりに溜まっていた。タンク内を清掃するよりも交換したほうが早いことから、タンクやキャップだけでなく、錆びが出始めていたホルダーを含めて交換を依頼。

22.  46966-SR3-000  ホルダー,タンク  820円  1個
25.  49672-SD4-003  タンク,クラッチフルード  777円  1個
26.  46973-SD4-003  キャップCOMP.,リザーブタンク  1,134円  1個

ブレーキオイルとクラッチフルードはホンダ純正、ウルトラBF DOT4(08203-99931)を使用。280,000kmの規定距離数を越えたことから、エンジンオイルとミッションオイルも追加交換。そして冷却水についても、消泡機能の維持と濃度調整のために交換となった。

整備作業

ブレーキキャリパーの交換作業そのものは、2016年の12ヶ月点検と同じ流れなので、そのときの写真を掲載する。

右フロントブレーキキャリパー

リフトに載せられタイヤを外し、ブレーキキャリパーの交換をスタンバイ。

右リアブレーキキャリパー

右リアブレーキキャリパー。減速中の車体姿勢を司る重要なブレーキだ。

新品の右フロントブレーキキャリパー

交換後の写真。ブレーキパッドはまだ組み込まれていない。新品のブレーキキャリパーは銀色で、これは表面処理が環境規制に対応した関係によるもの。新造当時は金色(正確には濃緑色)の色合いだった。

左フロントブレーキキャリパー

今まで様々なブレーキパッドを使ってきたが、現在はホンダHAMPのブレーキパッドを継続使用中。写真はENDLESS Super Street S-sportsで、確かに低ダストだったものの、初期制動のフィーリングが想像以上に悪く、早々に廃棄した。

新品の右リアブレーキキャリパー

リアブレーキキャリパーが交換されたところ。

取り外された部品たち

車体から取り外され、役目を終えたブレーキキャリパーやブレーキマスターシリンダーなど。これらは持っていても仕方ないので、廃棄処分を依頼した。

作業後チェック

作業は「旧い車なので時間を掛けたい」と普段と同じく一泊二日で行われた。ドライブレコーダーによる解析では、預けた日の11時過ぎからピットに入って作業開始。その日の撮影終了時刻が20時ジャストだったことから、遅くまで作業を続けていたようだ。

フロント側新品キャリパー

リフレッシュしたフロントブレーキ側を見る。SiR系よりもブレーキローターをインチアップし、ホイールに接触しないギリギリまでサイズアップしたキャリパーの組み合わせが、改めてよく分かるようになった。

これら各部品の大型化に伴うバネ下重量の増加がデメリットとして取り上げられ、特に軽量化を名目にブレーキローターのサイズダウンを語ることが見受けられる。確かに軽量化は、エンジンパワーが限られる車では有効な武器となるが、引き換えに熱容量の低下というマイナス点が存在する。

ブレーキは摩擦を利用し、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置だ。制動により発生した熱はブレーキローターに溜め込まれ、大気へ放出されていく。この溜め込みが熱容量で、大気への放出が冷却となる。容量と名付くだけあって、増やしたいならローターのインチアップが基本となり、それだけ重量が増えてしまうことは否めない。軽量化のためにブレーキローターのインチダウンで熱容量を減少させてしまうと、飽和状態になるまでの時間が短くなり(=冷却が追いつかなくなり)、ハードなブレーキングを繰り返すと効かなくなってしまう恐れがある。

制動性能を求めるなら摩擦力を上げればよく、早い話がブレーキパッドの交換となる。重量をアップさせてまでインチアップした理由は、特にサーキットという極限のシチュエーションにおいて、大きな熱容量を確保して飽和状態までの時間を稼ぎ、安定した制動性能を維持することが背景にある。よく言われることだが、メーカーの設計に、意味のない部分は存在しない。

リア側新品キャリパー

制動時の姿勢制御を担うリアブレーキは、フロント側に比べれば目立ちにくいものの、銀色に光るおかげで自然と目に入るようになった。ブレーキキャリパーの交換に併せてサイドブレーキの調整が行われており、レバーの引き代が規定の6~9ノッチ以内に収まるようになっていた。

キレイになったフルード用タンク類

新品のブレーキマスターシリンダーとクラッチフルードのリザーブタンク。それぞれ白いタンクになり、クラッチフルード用リザーブタンクについては、ホルダーも交換したことから、総じて見た目が良くなっている。もちろん、操作フィーリングはこれまでと変わらず。

キレイになったフルード用タンク類

クラッチフルードのリザーブタンク内は、このとおり。今まではタンクの底に汚れが溜まっていたおかげで、フルード本体の汚れが全く分からなかったが、白いタンクにリフレッシュされたことにより、液面の目視点検がしやすくなった。

法定12ヶ月点検の整備そのものは異常なし。

ホイールクリーナーで防食めっきを傷めた全てのブレーキキャリパーが新品に戻り、ようやく洗浄ミスのショックから立ち直ることになった。時間の経過と共に、表面を覆うめっきの質感がどう変わっていくか、長期観察の再スタートを切れる。

そんな表面的な問題だけではなく、前進状態から停止し、後退してから再度停止すると「パキン」「カキン」と音が出るようになっていた。恐らくブレーキパッドを押さえるリテーナーやパッドスプリングのテンションが失われ、キャリパー内でパッドが動いて金属音が出ていたのかもしれない。

2016年12月の一度目のブレーキキャリパー交換以降、ブレーキパッドの交換を散々繰り返し、その中でリテーナーやパッドスプリングを傷めていた可能性がある。ついでに、サーキットでのスポーツ走行で使っていたブレーキキャリパーだったので、このまま長らく使い続けるには不安があった。

ブレーキキャリパー内部の不安点を解消する意味でも、今回の緊急リフレッシュは正解だった。月面到着に向けた長期的な運用がまだまだ続く点を踏まえても、高い費用とは感じなかった。

法定12ヶ月点検、無事終了。

走行距離:280,190km

ブレーキキャリパー次回OH予定:2022年12月
ブレーキマスターシリンダー次回OH予定:2022年12月
ブレーキホース次回交換予定:2022年12月

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