エキマニの割れが判明してディーラーへ出向き、そのまま入院となってしまったS15シルビア。 結論から言うと、エキマニの割れ以外にも、タービンブローまで発覚。交換に次ぐ交換が重なることとなった。 部品の手配がうまくいかず、修理期間の見込みがなかなか立たないということがあったが、無事に復帰することができた。
ヒビと錆でボロボロになっていたエキマニの遮熱板は、新品交換。ここがキレイになると、エンジン本体の印象も大きく変わる。
遮熱板以外の交換された部品は、隙間からなんとか見てみるしかない。新品のエキマニの肌の色は、鋳鉄特有の銀色をしていた。
取り外された、割れている純正エキマニ。四番(右側)のパイプに割れが生じている。
エンジンブロック側からチェックすると、ヒビは最大で1mm近い隙間が生じていた。当初は上部だけのヒビだと思っていたら、下部(裏側/タービン側)まで回り込んでいたことが判明。パイプのヒビは30mmほど残してぐるりと入っており、まさに首の皮一枚でつながっていたようだ。
エキマニとタービンの連結部となる、各パイプの集合部分。SR20DETは直列4気筒なので、点火と排気の順序は1→3→4→2。このことから、集合部分での排気ガスが出てくる位置を見直してみると…。
こんな具合。番号はエンジンブロックの排気ポートの位置で、排気ガスの排出順序は1→3→4→2となる。排気ガスは仕切り板を境目にして交互に排出され、集合部での圧力干渉を極力避けるように設計されている。5ナンバーサイズのスリムボディにターボエンジンを縦置きで詰め込んでいるので、エンジンの排気ポートとタービンは非常に近い。限られたエンジンルームの中で等長エキマニにしようとすると、タービンに最も遠い1番パイプと最も近い4番パイプを同じ長さにしなければならない。こうなると、4番パイプは垂直に立ち上がり、∩形を描いて下に降りていくような(社外品に多い)デザインになってしまう。
SR20DET特有の低中回転域から発揮する、強力で爽快な加速力を得るには、タービンのハイレスポンスが不可欠だ。これを実現するためには、各排気ポートから出た排気ガスは最短距離でタービン本体に入り、いち早くタービンホイールを回す必要がある。ゲロゲロサウンドを発しながらも、あえて不等長エキマニにしていた理由が、ようやく分かった。
エキマニを実際に「割って」みた。パイプのほとんどが裂けていたおかげで、薄い鉄板を千切るような感覚で切り離すことができた。ヒビの断面にはカーボンがガッチリと固着しており、長い間割れたままになっていたと考えられる。切り離した4番パイプのみ、鋳鉄の勉強用に保管することになった。
エキマニ表面を覆う錆を磨いてみると、銀色の肌が出てきた。錆が防錆塗料の役割を果たし、エキマニ本体を守っている。ときどき、エキマニが錆びていることを心配する人がいるが、これは高熱での酸化によるものなので心配無用だ。
取り付けられた新品エキマニ。ターボエンジン特有の高い排気温度の影響からか、鋳鉄の銀色の肌が早くも錆び始めている。スタッドボルトやナットも新品を装着し、排気側のリフレッシュが完了した。純正エキマニは仕様変更されており、4番パイプ部分に排気温度計を装着できそうな枝が装備されている。
当初はエキマニの割れだけかと思っていたところ、ディーラーから一本の電話が入った。「タービンの羽根がハウジングに接触することがあり、タービン本体も一緒に交換したほうがいい」なんとタービンブローが発覚。ここでタービンを交換せずに後回しにすると、完全に故障したときにエキマニの脱着工賃が再び発生してしまうことを意味する。費用は掛かってしまうが、工賃を抑えるためにタービンの換装を即了承するが、この時点での新品純正タービンの国内在庫はゼロ…。リビルドタービンも見つからず、メーカーに製造依頼となり、納期は一ヶ月弱。これがそのまま、ディーラーでの入院期間となってしまった。
さらに連絡が入り「新品タービンの納期が二ヶ月弱になりそうだが、よく探したところリビルドタービンが見つかった」という朗報がやってきた。迷うことなく、リビルドタービンをチョイスし、ようやく修理完了となった。ディーラーに入院してから、三週間が経過していた。
リビルド品への換装となるので、ブローしたタービンは業者に返送する。前オーナーがブーストアップを行っていたことで、極限状態で稼動し続けていた。本当にお疲れ様。
ブローバイガスの汚れが付着している、吸気側となるコンプレッサーホイール。ハウジングにはGARRETT、A/R60の表記も見える。
コンプレッサーホイールとハウジングが接触する様子。サービスマニュアルによると異音が疑われるが、特に発生していない。むしろ気になったのは、通常なら軽やかに回るはずのコンプレッサーホイールが、とても重たい回転になっていた点。これで疑われるのは「力不足、加速不良」とのこと。
純正状態でも高い回転数(100,000rpm以上)なのに、ブーストアップでより高回転化していた経歴を持つ。そこにオイルの劣化やタービンへの給油不良が起きると、軸の油膜切れで焼き付きが起きてしまい、タービンブローの原因となってしまう。前オーナーのオイル管理状況は分からないし、タービン本体の寿命も考えられるが、ブーストアップはそれなりのリスクがあるということ。
リビルドタービン本体は見えないが、美しい黒で塗装されたアクチュエータがリフレッシュしたことを静かにアピールしていた。
排気漏れの異音は無くなり、聞き慣れたSR20DETのゲロゲロサウンドだけが響く。明らかに加速力が良くなり、アクセルワークに対して車が機敏に反応するようになって、FR車ならではの軽快なドライビングが楽しめる。シルビアはピークパワーよりも、ドライビングプレジャーの追求のほうがピッタリと思った試運転となった。