横転事故

首都高5号線下り。北池袋出入り口から、ドンキホーテを視界に入れながら、右カーブとなってC2と合流する熊野町JCTに入る。一際甲高い排気音を響かせながら、C2側から猛烈なスピードで5号線に合流してきたのは、フェアレディZだった。強引な割り込みを行い、慎重な合流を行っていたワンボックス車にぶつかりそうになって、クラクションが鳴り響く。左側合流区間にワンボックス車、合流区間と走行車線の真ん中にZ、右側となる走行車線に私のシビックRという、とんでもない状況に陥る。この間、僅か5秒足らずのことだったが、かなり怖かった。接触回避のため減速して、二台をやり過ごす。朝から非常に不愉快な思いをさせられたZは、相変わらず右左に車線を変更しつつ、大音量の排気音を発しながら板橋JCTの5号線側に消えていった。

板橋本町出入口を過ぎて、緩いカーブが続く区間。突然の渋滞が発生し、同時にジャリジャリとタイヤが異物を踏みつける音が響いた。よく見ると防音壁の反射板が剥がれて砕けており、徐々に大きくなっていく落下部品。明らかに事故だった。誰だよ朝っぱらから……まさかなぁと思いつつ、前車が車線変更をして視界が広がると、予感的中。先ほどまで無茶な運転を続けていたZが、転がっていた。

横転したZその1

事故発生から数分も経過していないらしく、ドライバーは携帯電話で電話しつつ、オロオロ…ウロウロ…。因果応報、自業自得とはまさにこのことで、先ほどの一件もある。嘲笑してやりたい気分だったが、すぐにそれどころではないことに気づき、意識が切り替わる。狭い首都高5号線での事故、他車を巻き込むわけにはいかない。電話連絡で精一杯のドライバーに代わって、現場に降り立ち応急救援を開始する。ドライバーの容態は、現時点で分かるのは少々のケガだけ。ただし、大抵の場合、体内のダメージは後から来る。「5号線で事故って…」とドライバーは繰り返していたが、これだけでは警察も現場の位置が分からない。「街路灯の番号を伝えて」と指示を飛ばす。破片を道路の側面に寄せつつ、吹き飛んだフロントバンパーを拾ってくる。バンパーは最初のスリップ地点、つまり衝突地点に落ちていた。これは廃車手続きの際に、ナンバーを無くすと余計な手続きが増えてしまい、結構面倒という体験談を聞いていたため。

引き続き「保険屋に連絡して、レッカーの要請を」とドライバーに言う。任意保険のサービスとして、無料レッカーサービスが付帯している事が多い。首都高会社にレッカーの手配を頼むと、例外なく高価コースになってしまう。JAFに入っているなら、まだ何とかなるようだが…。これだけでなく、保険会社に事故を通知することで、設備弁償処理や(入っていれば)車両保険の手続きが始まることになる。ようやく首都高のパトロール隊が到着。隊員に状況を説明して引き継いでしまえば、応急救援は終了。現場を離脱した。

横転したZその2

実際は、夜明けの出来事。

横転したZその3

かなりいじってあったZだが、その能力をサーキットではなく、公道で発揮させてしまったのが間違い。地面と唯一の接点となり、挙動の全てを司るタイヤは、ぱっと見ただけで寿命を超えていると判断できた。そんな状態で、踏み込んではならない、自分でコントロール出来ない領域に達した結果なのだから、車に乗っているのではなく、乗せられていたことになる。

事故の直前に、無理な割り込みで他車へ被害が及びそうになっていたことを踏まえると、起こるべくして起きた事故。自損で済んだのは幸い。大切なものを失ってから後悔しても遅い。車を存分に『乗りこなしたい』なら、サーキットしかない。