短距離や長距離問わず、運転席に座ると強烈な腰痛に悩まされるようになってしまい、ドライブ時は鎮痛剤を必ず携行するようになった。どうもシート内部のウレタンが崩壊しているのが原因らしく、正しい姿勢を保てないことから腰に負担が掛かっているようだ。

シートバックのサイドサポートには穴

シートバックのサイドサポートは、乗り降りの度に服と摺れる。布地が摩耗してしまい、ある日ビリッという音と共に穴が開いてしまった。この部分のウレタンは柔らかくなっており、内部で崩壊が進んでいる。

潰れた座面のサイドサポートその1

座面のサイドサポートも傷んでおり、潰れてしまっている。乗り降りの度に太股が押し当てられるので、どうしても潰れやすい。

潰れた座面のサイドサポートその2

太股をサポートするほどの弾力は失われており、セミバケットシートらしい太股を閉じてホールド感のある運転スタイルには程遠くなっている。

せっかく純正でレカロシートを採用していることから、改めて社外製シートを買うことは気が引ける。アフターパーツとしてのレカロシートの場合、シートレールの都合からドア寄りにオフセットしてしまうのもマイナス材料だ。となると、リフレッシュ手段はEK9(DC2)用の純正レカロシートを入手するしかない。車と部品の性格上、運転席用シートは程度が悪くても高価ながら、使用率が低い助手席用は状態が良くて、しかも比較的安価となっていることが多い。そこで助手席用シートを入手し、部品取りとして解体、使える部分を運転席用シートに転用していくことにした。


<注釈>助手席用シートを入手したとして、リクライニングダイヤルの向きがドア側になり、多少操作性が悪くなることが無視できるなら、分解せずにそのまま使うのも一つの手段。</注釈>

下準備

入手した助手席用シートは分解し、業務用の強力クリーナーと家庭用洗剤を使って、布地と内部ウレタンを徹底的に洗浄しておく。

流用にあたっては、背中と接するクッション部分、内部のウレタン、布地は運転席側に使える。座面部分は運転席用、助手席用共に同一品なので、特に分解することなくそのまま使用可能。つまり、シートバック内のフレームだけが、運転席用として使うことができない。

レカロシートの左右転用方法として『関節部分にあるリクライニングダイヤル用のシャフトを叩き、反対側に突き出させる』というのがあるが、EK9(DC2)用レカロシートは不可能。シートバック内のフレームが、運転席用シートと助手席用シートで異なっているため。

リクライニングダイヤル側

分解した助手席用シート、リクライニングダイヤル側の内部。歯車型の軸受けが段付加工されている。

非ダイヤル側

対する、非ダイヤル側の内部。歯車型の軸受けの次には、大きな菊座形のストッパーとなっている。左右で非対称の構造となっているために、入れ替えができない。こうして使いどころがなくなったフレームは、後で廃棄することになった。

乾燥中

洗浄後の乾燥タイム。内部ウレタンには裂けや崩れはなく、布地も傷みが極めて少ないことから、全体的な状態は上々のようだ。写真は撮らなかったが、座面部分は全く異常がなく、洗浄と乾燥を行い、分解することなくそのまま運転席用として使う。

シートカバー

服が直接摺れると、シートの布地が摩耗することは避けられない。そこでシートカバーを装着し、多少なりとも防御力をアップさせる。数あるレカロシート用カバーの中から選んだのは、7-Wood外部リンク:セブンウッドの551/SR-2-3-4-5用背・座サイドサポートカバーセットをチョイスした。後付け感が少なく、固定にマジックテープや両面テープは使わず、シートとフレームの間にプラガイドを挟み込む方式なので布地本体へのダメージを心配する必要がない。

シートカバーを装着中

取り付け説明書も同封されているので、装着は難しくはない。尻用クッションとサイドサポートの間に、プラガイドを押し込んでいく。

プラガイドを装着中その1

プラガイドはフレームとパッドの間にセットする。多少きついので、手や指を傷めないよう注意。

プラガイドを装着中その2

カバー後端部のプラガイドは、シートバックと連結する軸に引っ掛ける。

座面用カバー装着完了

座面用カバーを装着することができた。デジカメの特性で汚れたカバーのように見えるが、新品なので実際は鮮やかな赤色をしている。

シートバックのストライカーを交換

この時点で、シートバックを固定するプロテクターストライカーとボルトを交換しておく。このプロテクターストライカーはプラスチック製で、カーブの横Gを受ける度にシートバック固定用の爪と接触している部分が少しずつ摩耗し、ガタつきの原因になってしまう。横Gの中でガタつきが発生すると、腰が浮き上がる感覚…事故やスリップによるスピンと同じ感覚に襲われ、本当に不快かつ非常に驚かされる。ボルトは固く締まっているので、正しいサイズのドライバーを使い、一気に緩めること。

 9.  81138-S03-Z01  プロテクター,ストライカー  2,094円@1,047円  2個
 10.  81139-ST7-Z01  ボルト 6X14  864円@432円  2個

分解作業

まず四点式シートベルト用のホールガーニッシュ(ベルトホール)を外すのだが、いきなりの難関部分だったりする。ちょうど真ん中部分で、互い違いの構造を持っており、お互いが爪で噛み合うことで固定されている。

ホールガーニッシュの構造その1
ホールガーニッシュの構造その2

上下合わせて計8箇所の爪があり、この爪を外さないと引き抜くことができない。無理に引っ張って外そうとすると、割れる恐れがあり、しかもこのパーツは廃番となって替えが利かない。

ホールガーニッシュの取り外しその1
ホールガーニッシュの取り外しその2

向かって左側部分から全周に渡って、隙間を少しずつ広げていくようにして外す。隙間を広げて爪を外すために、ヘラやスクレーパー、ショベル、細いマイナスドライバーを総動員していく。

ホールガーニッシュが取れた

ホールガーニッシュが割れることなく外れると、ポンと飛び出すようにして外れる。ホールガーニッシュ部分の縁内側は、シート布地とウレタンが両面テープで固定されているので、予め剥がしておくと後がラク。

新品マウント

リクライニングダイヤルは、カバー内の三箇所の爪をマイナスドライバー等でこじって外し、引き抜くようにして外す。

フォールダウンノブとガーニッシュ

フォールダウンノブとガーニッシュは、引っ張れば抜ける。

リクライニングカバーの取り外し

リクライニングカバーは、片側三箇所のクリップピンで固定されている。白色丸部分は押し込めば外れるが、黄色丸の部分は、内側からマイナスドライバーで押し出して外す。ダイヤル側も同じく外しておく。

ウレタンの粉

崩壊したウレタンが、カバー内部に蓄積して大変なことになっていた。前々から、運転席の後ろ側で黄色い粉塵がやけに出ることが不思議だったが、原因はこれだった。ここまできたら、座席を車体から外しておく。

ピポットクリップ

左右両側にあるピポットクリップを外せば、シートバックと座面を分離することができる。シートバック部分は軽くはないので、指先を挟まないように慎重に持つ。

固定用針金

底部で四箇所ある布地固定用の針金(ホッチキスの針そっくり)をマイナスドライバーでこじって外す。この針金については、復旧するときにだいたい同じ位置に打ち込むことになるので、捨てないように注意する。また、ここで一旦底部にあるクッションのフックを詳細に観察し、どのように固定されているかしっかり記憶する。

サービスマニュアルを引用

サービスマニュアルを再参照。図でいう上側のトリムカバーがシート布地を示し、下側トリムカバーが背中用クッションになる。フックに対し、背中用クッションの爪を巻き込むようにして固定される。

いよいよクッション部分、布地、ウレタン部分の取り外しとなる。まずは背中部分のクッションを捲っていくが、途中で引っかかるようにして止まってしまう。

太い針金で固定

止まってしまうのは、背中部分のクッションは捩れないように、内部フレームに太い針金で巻きつけられているため。クッションを再利用するか否か問わず、針金をラジオペンチで緩めて外す。内部フレームの針金が巻きつく部分がとても薄く、引っ張られて折れてしまうことを防ぐ。三箇所ある固定部分の中央(水色)は、特に手が入りにくい部分で、些細なミスでウレタンから針金が取れてしまった。ドナーとなった助手席用シートも同様だったりする。

ワイヤーで固定

布地部分はワイヤーで固定されているので、フックを少し捲ってワイヤーと一緒に外していく。四点式シートベルト用のホールガーニッシュ下では、三箇所のフックで背中部分のクッションと共締めされているので、一気に外しても外してもいいし、布地→背中部分のクッションと順番に外すパターンもある。

完全分解まであと少し

分解作業も終盤。裏側、四点式シートベルト用のホールガーニッシュ下部分ではフレームとウレタンが接着剤で貼り付いているので、カッターナイフで剥がしておく。背中部分のクッションを外し、内部フレームからウレタンを上に引っ張るようにする…写真を例にすると、左方向に引き抜くようにして、分離していく。

分解完了

分解完了。19年に渡る着座で、背中の汗がウレタンを通じてフレームまで達しており、錆が発生していた。ケレンから錆止め塗装が追加となった。組立作業に入る前に、フレームにまとわりついたウレタンの破片を出来るだけ落としておく。

崩壊状況

シートバックのサイドサポート

シートバックのサイドサポートには大きな穴が開いていた。ドア寄りのウレタンが激しく崩れていることから、車から降りるときに強いストレスを受けるようだ。フレームと接する補強繊維は転げ落ちていた。

ショルダー部分のサポート

こちらはショルダー部分のサポート。やはり降りるときのストレスで穴が開いていた。補強繊維は残ってはいたが、切れてしまい補強として効いていない。

座面部分のサイドサポート

座面部分のサイドサポートについては、表面の布地からしてウレタンが崩れていることが分かっており、確かに大きな穴が開いていた。反対側、乗り降りとは全く関係ない左脚側のサイドサポートについては唯一無傷だったことから保存しておき、後々助手席用シートのサイドサポートのみの交換の際、流用することになった。

写真には撮らなかったが、背中用クッションは潰れていたことが分かり、これが腰痛の直接原因だった。上半身の体重はクッションで分散されることなく、内部フレームに到達していて、鉄板で支えていれば腰も痛くなるか。尻用クッションも裂けており、まともなウレタンは左脚用のサポートだけという、酷い損傷状態だったことが判明。毎日乗り降りしている使用方法を考えると、19年での崩壊は仕方ないかもしれない。まさに使い切った。シートは消耗品だった。

組み立て

散らばったウレタンの粉塵の清掃した後、組み立て作業に入る。分解作業の逆を行く。内部フレームにウレタンを装着するときに、勢い余って切ってしまわないように注意するとか、シートバック底部のフック状になっている固定部分を確実に装着、ホッチキス状の針金をしっかり打ち込む、接着されていた部分はしっかり接着する等、手順を省略することなく、組み立てていく。

強力両面テープ

四点式シートベルトが通る穴近くには、布地が両面テープで貼り付けられている部分があった。厚めの強力両面テープを使い、布地がズレないように貼り付けておく。

車体に装着した直後

シートバック用のシートカバーを装着し、車体にシートを戻したら完成となる。ボロボロになっていた運転席が蘇り、くたびれていた印象がなくなった。各サイドサポートの位置が正常に戻ったことで、久しぶりに心地よいホールド感…初めてセミバケットシートに座ったときの、あの感動を味わうことになった。背中用のクッションも交換したことで、腰への負担が低減されて短距離の運転でも非常にラクになっており、長距離の運転も苦痛が減るはずだ。

分解から組み立てまで、撮影や崩壊部分のチェックをしながらのんびり行ったところで、正味2時間程度の作業時間だった。事前の清掃作業を含めても、実質半日も掛かってはおらず、難しい作業ではない。シートは消耗品として考えると、将来的には再びウレタンが崩壊し、腰痛に悩まされながらの運転になるはずだが、悲観的な予測は立ちにくい。というのも、現状の走行ペースと19年で崩壊した事実、リフレッシュしたシートにはシートカバーを装着したことから、二度目の崩壊に見舞われる前には、月面到着(=384,400km)が達成できそうだからだ。

先述したように、リクライニングダイヤルの位置が逆転してしまうことを無視できるならば、助手席用シートを何もしないで運転席側に転用するほうが早く終わる。金も時間も掛からないのが、現車の助手席用シートと相互に入れ替える方法だ。安価だった助手席用シートを部品取りとして入手したところで、シートカバーや構成部品の購入により、リサイクル品として流通している運転席用シートよりも高くなっていた。ホームセンター等で売られているウレタンを使って詰め直す等、現物修理パターンも考えられることから、値段を抑える手段はいくらでも見つかる。この先の長期間に渡る使用、本来のホールド感を取り戻し、腰への負担を考えると、多少の費用は仕方ないと割り切ることになった。

走行距離:253,416km

助手席用シート:28,000円

部品代:2,958円

シートカバー:21,708円

総計:52,666円