経年により、パワステの油圧ホースのバンド部分からオイル(フルードとも。以下オイルに統一)が漏れるようになった。手元のメモ帳によれば、2013年あたりから油圧ホース関係の部品リストを作っていたようなので、その時点で異常を認識していたことになる。現在に至るまで、オイルがだばだばと滴るようなことはなく、滲む程度だ。ところが、去年末からパワステポンプ本体からの漏れやフィードホース表面にヒビが見つかり、いよいよ先延ばしできない状態に陥った。まずは現状把握だ。

滲んだオイルで湿った配管

車体左側(助手席側)から、バッテリーに覆いかぶさるようにすると見える部分だ。漏れたオイルで、リターン側配管が湿っているのが分かる。高圧側配管のカシメ部、油圧スイッチからの漏れは見当たらず。

リターン側配管を辿る

リターン側の配管を辿っていくと、やはりパイプとホースの接続部分からの漏れが見つかる。

オイルポンプ本体の様子

そしてパワステオイルのリザーブタンクに戻る。リターン側のホースとクリップ、タンク本体が漏れたオイルで湿っている。漏れにより減少したオイルは補充しておらず、オイル量はアッパーレベルとロアレベルのちょうど中間だ。リザーブタンク本体もすっかり変色している。

オイルポンプ本体の様子その1

パワステポンプ本体をチェック。ハウジングには変色、湿り気、粉塵の付着があり、オイルが漏れていることを示している。

オイルポンプ本体の様子その2

プーリー側になると湿り気が強くなることから、内部のオイルシールの劣化が疑われる。現在まで異音や妙な振動は発生しておらず、漏れ以外の異常は見つかっていない。

フィードホース表面のヒビ

2016年の晩秋に発見した、フィードホース表面のヒビ。細かいヒビが無数に入っており、放置し続けると傷口が深くなるかもしれない。パワステ関係のリフレッシュを決意したのが、実はこれがきっかけ。

■ □ ■

現状を把握したところで、部品交換の範囲を考えてみる。オイルが漏れているホースとクリップ、そしてパワステポンプまで全交換だ。そもそもラインオフから19年239,700kmになった現在において、過去一度もパワステオイルは交換していない。となると、劣化したオイルや粉塵、鉄粉などの異物が油圧経路内全体に回っている可能性があり、一部を新品にしてもリフレッシュ効果は上がりにくい。油圧のかかるオイルシールといえば、パワステポンプ内だけでなくステアリングギアボックス内にも存在し、ポンプ側で漏れている以上はステアリングギアボックス側での漏れも時間の問題かもしれない。

今までオイル漏れで散々苦労してきた経験から、費用を度外視してパワステ関係部品の一括交換を行ってリフレッシュし、後の維持をラクにするほうが良いと判断、さっそく準備に取り掛かった。

1.パワステフィードホースの修理

フィードホースは廃番となっており、新品での購入はできない。そこで中古のフィードホースを入手し、ホース部分のみを交換しておき、一種のリビルト部品として使うことにした。ちなみに、今回の作業でフィードホースの状況を再確認してみたが、やはり入手不可能だった。

中古のフィードホース

2014年6月に入手しておいた、中古のフィードホース。当時は捨て値に近い価格で放出されていたが、現状では5桁に達することが珍しくなくなった。おまけでリターン側のホースや配管まで含まれており、今回使用するのはフィードホースのみだ。

ゴムホース部分のみを交換する専門業者は、けっこう見つかる。業者によっては、ステンメッシュ化を行ってくれるところもあり、ベースとなる中古のホースを確保しておけば、この先困ることが減るかもしれない。今回は引き続きゴムホースを使うことにして、愛知県にある杉田ラジエーター工作所外部リンク:杉田ラジエーター工作所に交換依頼。工場に到着した翌日には修理が終わって返送されるという、超高速処理が決め手だ。

返送されたリビルトフィードホース

帰ってきたフィードホースをチェック、まずは全体像から。ホース固定用のブラケットは移植してもらった。金属配管部分は再塗装され、見た目からしてもきれいになっている。続いて、肝心のホース部分をよく見てみる。

ゴムホース部分の型番はNS914

Parkerというロゴから、パーカー・ハネフィン日本株式会社がヒットする。続いてNS914という型番から、正規代理店となるプロフレックス株式会社に行き着いた。確かにNS914という型番でカタログ上に掲載外部リンク:プロフレックス株式会社があるが、使用上の注意として『パワーステアリングホースとしては使用できません。』と記載がある。おいおい大丈夫か?と杉田ラジエーター工作所に問い合わせてみたところ、メーカーやサプライヤーの正式な指定部品ではないためだという。鉱物性作動油という点では合致しており、14MPaという最高使用圧力も、パワステポンプの吐出圧(5.3~6.4MPa)を余裕でカバーする。これまでに問題は起きていないという返答を得たので、実際に使って様子を見ることになった。


 53713-S03-Z01  ホースCOMP.,パワーステアリングフィード  5,000円  1個(中古)
 杉田ラジエーター工作所  パワステホース修理費  7,500円  1式
 ホース修理往復送料等  2,400円

2.リビルト品の手配

修理は近所のホンダディーラーに依頼。まずはディーラから、パワステポンプとステアリングギアボックスのリビルト品が手配可能か聞いてみると「OK、リビルト品の手配はできる」という返事で一安心。そのまま部品商に在庫状況を問い合わせてもらったところ、出てきた返答が「パワステポンプとステアリングギアボックスのペアが1セットだけある」という、極めてギリギリな状態で、即発注。世の中にはリビルト業者とその代理店は多数あり、「1ペアのみ」なんてディーラの提携先に限った返答だと思うが、どういうことか。

理由は簡単で、需要がなくなったためだという。部品業界からしてみれば、製造後10年から15年も経てば大昔レベルで、ど旧車として扱われる。現役の台数があっても、実際の修理需要がなければ部品供給は止まる。今年は発売から20年になり、交換したいと注文を出したところで、こんな旧いのを今更?というのが現実だろう。よくよく調べてみたところ、かつては多数溢れていたリビルト品も、現在は受注終了、もしくは現物修理のみというパターンばかりになっていた。

ステアリングギアボックスのリビルト品

ディーラにやってきたステアリングギアボックスのリビルト品は、ジャパンリビルト製だった。以前交換した、オルタネーターlinkもジャパンリビルト製だったことから、ディーラやショップでリビルト品を注文すると、代理店を通じた発注先の殆どが同社なのかもしれない。普段は車体に装着しているのでサイズを実感しにくいが、こうして単体で見ると大きい。現物修理用のコアとして、廃車の中古品を勢いで買わないで正解。こんな大きなもの、部屋に置けるわけがない。

ラックエンドも付属

ステアリングギアボックスのリビルト品には、ブーツやラックエンドセットも組み込まれていた。ステアリングギアボックス全体の交換を行う理由は先述したように、劣化したオイルや粉塵、鉄粉などの異物の循環の可能性、オイルシールの劣化が予想されているだけでなく、19年239,700kmに渡ってブーツ内部のラックエンドセットが未交換で、経年やストレスによるガタつきや異音が発生するであろうタイミングだったためだ。タイロッドエンドは2013年12月の車検で交換linkしているが、コンディションを揃えるために新品に取り替えることにした。

パワステポンプのリビルト品

こちらはパワステポンプのリビルト品で、やはりジャパンリビルト製。両手に収まる程度のポンプで重たいステアリング機構をサポートしているのだから、経年によるオイル漏れは仕方ない。プーリーは当初、新品を使う予定だったが、欠品により古いポンプから移植して再使用する。


 56110-PCT-003  ポンプサブASSY.,パワーステアリング  23,760円  1個  ※1
 53601-S03-Z01  ボックスCOMP.,パワーステアリングギヤー  50,760円  1個
※1:リビルト品、部番は適合純正番号

費用を抑えるためにリビルト品をチョイスしたが、これが正解だった。というのもこれら二つの部品は、後の調査で廃番になっていることが判明し、新品での入手が不可能になっていたからだ。

3.交換部品

作業は『パワステ油圧系統交換』と『パワステポンプ、ステアリングギアボックス交換』の二つに分けられていた。まずはパワステ油圧系統関係の部品から羅列する。

パワステ油圧経路交換の図面
 1.  53697-SB3-952  キャップ,オイルタンク  367円  1個
 2.  53701-S04-J51  タンクCOMP.,パワーステアリングオイル  5,724円  1個
 5.  53720-SP0-020  パイプCOMP.,リターン 10MM  540円  1個
 6.  53721-SM4-013  クランプD 15.5MM  307円  1個
 8.  53729-671-003  クランプD 15.5MM  226円  1個
 10.  53731-S04-J50  チューブ,パワーステアリングサクション  1,792円  1個
 11.  53732-S04-950  ホースCOMP.,リターン  1,328円  1個
 12.  53733-S04-J50  ホース,パワーステアリングオイルタンク  1,015円  1個
 13.  53736-S04-950  クランプD 15.5MM  334円  1個
 15.  53739-S04-950  ホース,パワーステアリングジョイントリターン  2,473円  1個
 16.  56490-P2A-003  スイッチASSY.,パワーステアリング  4,892円  1個
 17.  90635-SM4-A02  クリップ,オイルホース  756円@189円  4個
 19.  91370-SV4-000  Oリング 14.8X1.9  226円  1個
 20.  91417-SZ3-003  クランプ,フューエルチューブ  420円@210円  2個
 21.  93403-06012-08  ボルトワッシャー 6X12  215円@43円  5個
 22.  93405-06012-08  ボルトワッシャー 6X16  43円  1個
 23.  95801-06030-08  ボルト,フランジ 6X30  86円@43円  2個
 24.  53728-S04-003  クリップ,リターンパイプ  270円  1個

工場出荷当時から締め込まれたボルト、クリップ類は固着していることが予想され、無理に緩めようとしてねじ山等を損傷してしまう恐れがあり、再使用はせずに全て新品交換とした。図中3番のブラケット、9番と14番の金属パイプは廃番で新品購入ができなかった。

続いて、パワステポンプ、ステアリングギアボックス関係の部品。ステアリングギアボックスの脱着に併せて、ギアボックスブッシュ(=パワステマウント)、3本の補機ベルトを交換している。

ステアリングギアボックス、ポンプ交換の図面
 5.  53436-S04-J51  クッションB,パワーステアリングギヤーボックス  594円  1個
 14.  53540-S04-013  エンドCOMP.,R.タイロッド  5,302円  1個
 17.  53560-S04-013  エンドCOMP.,L.タイロッド  5,302円  1個
 19.  53685-SL0-A00  ブッシュ,ステアリングギヤーボックスマウンティング  776円@194円  4個
 20.  53686-SH3-010  カラー,ステアリングギヤーボックスマウンティング  776円@388円  2個
 22.  94030-10080  ナット,6カク 10MM  74円@37円  2個
 25.  94201-20180  ピン,スプリット 2.0X18  54円@27円  2個
 2.  90305-PAA-A01  ナット,パワーステアリングプーリー  151円  1個
   56992-P72-506  ベルト,パワーステアリングポンプ  2,268円  1個
   31110-P73-508  ベルト,A.C.ジェネレーター  2,343円  1個
   38920-P73-023  ベルト,コンプレッサー  2,268円  1個

3本の補機ベルトについては、前回交換時linkにおいて、ヒビ割れ等のダメージが発見されており、100,000kmに達する前にボロボロになっていることが分かった。そこで今回の作業で同時交換しておき、300,000km到達時点まで十分な寿命を持たせることになった。

交換作業の記録

ディーラでの入院期間は3日間となり、高額な修理費となったことで、写真の撮影をお願いした。おかげでどのような作業が行われていたのか、一目で分かることになった。この場ながら、お礼を申し上げたい。

作業前のサスメンバー

タイヤを外してリフトで車体を持ち上げ、作業開始。同時に下回りのアンダーコートをチェックすることになり、しっかり定着して状態は良好だ。

ステアリングギアボックスを外した後のメンバー

パワステオイルを全て抜き、油圧パイプ、エキゾーストパイプ、チェンジロッド、タイロッドエンド、メンバー内のスティフナーを外すと、ようやくステアリングギアボックスにアクセスできる。同時に、室内側からハンドルシャフトを切り離す作業も行われている。

外されたステアリングギアボックス

外されたステアリングギアボックス。メンバーの撮影から3時間が経過していた。オイルが飛散しているように見え、難作業だったようだ。

外された油圧経路系部品

外されたパワステ油圧系統の部品とオイルポンプ。フィードホースについては持ち帰り、リビルト用の素材として引き続き保管することになった。

組み立て中

メンバー内にステアリングギアボックスやスティフナーが組み込まれ、元通りになりつつある。

作業完了

完成。漏れたオイルで汚れていたオイルタンクやホース類がリフレッシュされ、不安要素を片付けることができた。オイルタンクの内容量が一目で分かるようなり、今後の維持管理がラクになりそうだ。お疲れ様でした。

後点検、テスト走行

パワステオイルタンク、オイルポンプ周辺

もう少し近寄って、交換部品をチェックする。ホース、オイルタンク、パワステオイルポンプそれぞれが本来の色を取り戻している。フィードホースの固定用ボルトが輝いており、リフレッシュ済みであることがハッキリと分かる。現状では、パワステポンプからは(うなり音とは異なる)動作音が気持ち大きくなっているが、試運転では不具合は見つからず、ディーラ曰く「エアを噛んでいる可能性があり、しばらく走って様子を見てほしい」とのこと。

フィードホース上の油圧スイッチ、リターンホース

フィードホース上の油圧スイッチは、統廃合の都合からか手持ちのパーツリストとは異なる番号のものが用意された。コネクタは変わらないが、形状が大きく変化した。ダークグレーベースに、鮮やかなスカイブルーの文字が印刷されたホースは、新品のリターンホース。

高速道路を主体としたテスト走行上では、ステアリングハンドルの感触が幾分軽くなっており、大きく変化したのが直進性。湾岸線等の直線道路において、これまでは細かい修正舵を当てることが多かったものの、リフレッシュ後は真っ直ぐ進むという意思に忠実に従うようになった。走行テスト時の天候は強い横風に見舞われていたが、粘るような直進安定性を体感できた。疲労感を覚えにくくなり、超長距離ランナー・グランドツアラーに相応しいハンドリングに大変身した。

場所と部品の手配の都合上、最初からディーラに作業を依頼した。純正パワステオイル(ウルトラPSF-II)代はポンプ交換工賃の中に合算されている。オイル交換は一度もしていなかった部分だけに、今後は定期的に交換するようにしたい。

一度に全ての部品を交換したことで高額な費用となったが、いざというときに部品の手配ができず、修理不能に陥ってしまうよりかはマシだ。フィードホースのヒビ割れを見つけなければ一斉交換の決断はしなかったはずだし、着手するタイミングが遅くなればなるほど、リビルト品を含めた部品の供給状況が途絶えてしまい、月面到着がより困難になってしまうところだった。ディーラからは「部品の供給が止まれば作業はできなくなる。持ち込みでなら対応する」と宣告されている。既にパワステポンプやステアリングギアボックスは廃番になり、リビルト品の在庫状況からも、滑り込みセーフを実感することになった。

走行距離:239,761km

パワステ油圧系統交換部品:20,987円
工賃:34,560円

ステアリングギアボックス、ポンプ交換部品:94,428円
工賃:48,600円

M/Tオイル交換:2,750円
工賃:2,160円

ショートパーツ:139円

値引き:624円

中古パワステフィードホース:5,000円
修理関連費合計:9,900円

総費用:217,900円

パワステオイル次回交換予定:300,000km