今年は、本来ならブレーキキャリパーのオーバーホールを行う年度だ。走行実態では18年235,000kmオーバーで、ちょい乗り、酷道、サーキットを問わず走り回っていることから、キャリパー本体はすっかりボロボロで、ブレーキパッドは左右で減り方が異なり、長年の使用でスライドピンの穴の損傷も予測できる等、経年によるダメージを考慮しなければならなくなった。そこで今後の長期運用を考慮し、部品が出るうちにキャリパー本体を交換することにした。

メッキが失われつつある古いブレーキキャリパー

鈴鹿工場で製造後、出荷された新品の状態では金色に輝いていたブレーキキャリパーは、経年により表面のメッキが失われて灰色に変化した。茶色の部分はブレーキダストで、ホイール用の鉄粉除去剤がキャリパーに付着し、意図しない清掃効果が繰り返されたことで、灰色の地肌が見えるようになった。基本的には毎日運転しており、周辺の空気(湿気)が常に入れ替わることからサビはなし。スリット入りローターによる摩耗の適正化を心がけていたことから、見た目での開き具合は不明。一例としてフロント側を取り上げているが、リア側のコンディションもほぼ同じ。

ブレーキキャリパー固定用ボルト

ブレーキキャリパーをナックルに固定するボルトも、経年によるストレスを抱え続けていると考えて新品に交換する。このボルトはブレーキキャリパー一つにつき2本使用するので、車一台で合計8本となる。

 45018-SM5-000  キャリパーサブASSY.,R.フロント  26,600円  1個
 45019-SM5-000  キャリパーサブASSY.,L.フロント  26,600円  1個
 90107-SM4-000  ボルト,キャリパーマウンティング  520円@130円  4個
 43018-S03-Z02  キャリパーサブASSY.,R.リヤー  20,000円  1個
 43019-S03-Z02  キャリパーサブASSY.,L.リヤー  20,000円  1個
 90103-SN7-003  ボルト,フランジ 10X25  660円@165円  4個

ブレーキマスターシリンダー

ブレーキマスターシリンダーのオーバーホールを行ったのが7年前の2009年12月で、次回の予定年度を2016年に設定していた。過去のレポートを見直していたところ、今年がそのオーバーホールの設定年度になっていたことに気づき、慌てて整備工場へ作業追加依頼を出し、オーバーホールキットの手配等はギリギリで間に合った。今回の作業をもって、ブレーキマスターシリンダーとブレーキキャリパーのオーバーホールを同一タイミングで施工できるようになり、今後の管理が非常にラクになった。

整備作業

右フロントブレーキキャリパー

リフトに載せられタイヤを外し、ブレーキキャリパーの交換をスタンバイ。こちらは先ほどでも掲載した、右フロントブレーキキャリパー。ブレーキパッドについては、引き続き使用する。

右リアブレーキキャリパー

右リアブレーキキャリパー。減速中の車体姿勢を司る重要なブレーキで、過去の定期点検では何度かショートパーツの交換が行われたことから、結果的には万全のコンディションではなかった。フロント同様、ホイール用の鉄粉除去剤がキャリパーに付着し、灰色の地肌が露出している。

新品の右フロントブレーキキャリパー

いきなり交換後の写真。ブレーキパッドはまだ組み込まれていない。新品のブレーキキャリパーは銀色で、これは表面処理が環境規制に対応した関係によるもの。新造当時は金色(正確には濃緑色)で六価クロムによる色合いだったが、猛毒かつ有害物質で環境への負荷も大きかったことから使用を制限し、現在は三価クロムによる処理で銀色になった。

左フロントブレーキキャリパー

左フロントブレーキキャリパーでは、ちょうどブレーキパッドを組み込んでいるところだった。ブレーキキャリパーの内側だけでなく、焼けと汚れで散々な状態だった板バネもきれいになって、見た目からしても最高のコンディションだ。

新品の右リアブレーキキャリパー

リアブレーキも交換され、清掃中のブレーキパッドの組み込みを待つ。リフトの上には18年238,000kmの走行を支え続け、役目を終えたブレーキキャリパーが置かれていた。

ブレーキマスターシリンダーのオーバーホール中

ブレーキマスターシリンダーのオーバーホール中。7年の使用でシール本体の大きな損傷はなかったものの、古いプライマリーピストン(写真右から二本目)のスプリングに至っては、新品と比べても明らかに縮んでおり疲労感は否めない。今後はブレーキキャリパーと同じサイクル、4年間隔でオーバーホールを行うつもりなので、ここまで酷くなる前にリフレッシュできそうだ。

フロント側新品キャリパー

リフレッシュしたフロントブレーキ側を見る。SiR系よりもブレーキローターをインチアップし、ホイールに接触しないギリギリまでサイズアップしたキャリパーの組み合わせが、改めてよく分かるようになった。

これら各部品の大型化に伴うバネ下重量の増加がデメリットとして取り上げられ、特に軽量化を名目にブレーキローターのサイズダウンを語ることが見受けられる。確かに軽量化は、エンジンパワーが限られる車では有効な武器となるが、引き換えに熱容量の低下というマイナス点が存在することを考えているのだろうか。

ブレーキは摩擦を利用し、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置だ。制動により発生した熱はブレーキローターに溜め込まれ、大気へ放出されていく。この溜め込みが熱容量で、大気への放出が冷却となる。容量と名付くだけあって、増やしたいならローターのインチアップが基本となり、それだけ重量が増えてしまうことは否めない。軽量化のためにブレーキローターのインチダウンで熱容量を減少させてしまうと、飽和状態になるまでの時間が短くなり(=冷却が追いつかなくなり)、ハードなブレーキングを繰り返すと効かなくなってしまう恐れがある。

制動性能を求めるなら摩擦力を上げればよく、早い話がブレーキパッドの交換だけでいい。重量をアップさせてまでインチアップした理由は、特にサーキットという極限のシチュエーションにおいて、大きな熱容量を確保して飽和状態までの時間を稼ぎ、安定した制動性能を維持することが背景にある。よく言われることだが、メーカーの設計に、意味のない部分は存在しない。

フロントブレーキパッドの当たり具合

フロント側のブレーキパッドをチェックすると、内周側がしっかり当たっていない。ブレーキパッドの装着位置は変えていないので、古いブレーキキャリパーが歪んでいたか、経年によりスライドピン部分やブレーキピストンの正しい平行移動ができなくなり、ブレーキパッドの偏摩耗が発生したと思われる。ブレーキキャリパーをリフレッシュして良かった…と実感するのと同時に、正しい摩耗状態になるまでは、急制動はなるべく避けなければならないことを認識することになった。

リア側新品キャリパー

制動時の姿勢制御を担うリアブレーキは、フロントに比べれば目立ちにくいものの、銀色に光るおかげで自然と目に入るようになった。サイドブレーキの引き具合は以前と変わらず、引いたまま走ろうとするとガッチリとした引き摺り感があって、交換に伴う一時的なフィーリングの変化は感じられなかった。

まとめ

法定12ヶ月点検の整備そのものは異常なし。COが0.02%、HC10ppmと低い濃度を保っており、平成10年10月以降の規制値も余裕でクリアできるほどなので、よく吸い、よく燃やし、よく排出するというエンジンの基本機能がしっかり整っている。古い車でも、入念なメンテナンスを継続すれば、環境負荷を抑えることができる。

全てのブレーキキャリパーが新品になり、ブレーキマスターシリンダーのオーバーホールも行ったことで、ブレーキタッチが激変、いやこれが本来の姿なのかもしれない。ブレーキペダルの踏み込み量に比例し、減速感がリニアに立ち上がる。求めていたブレーキフィーリングそのもので、軽く踏めば緩やかな減速、強く踏めば急減速になり、ブレーキペダルで車体の挙動を制御する楽しみを改めて知ることになった。製造からの経過年数が二桁に達したら、思い切ってブレーキキャリパーを新品にして、リフレッシュするのも悪くはないと思う。ブレーキキャリパーのオーバーホールとは明らかに異なる、心地よいブレーキフィーリングを体験することができるはずだ。法定12ヶ月点検、無事終了。

走行距離:238,072km
12ヶ月定期点検:8,000円
距離点検項目:3,000円

ブレーキマスターシリンダーO/H工賃:5,600円
ブレーキマスターシリンダーキット:6,000円

F左右ブレーキキャリパー交換工賃:4,200円
R左右ブレーキキャリパー交換工賃:5,600円

ブレーキフルードBF-4:1,500円
クラッチフルード:750円
上記フルード交換工賃:2,100円
ブレーキクリーナー:1,200円

F左右ブレーキキャリパー:53,200円
Fキャリパーマウントボルト:520円

R左右ブレーキキャリパー:40,000円
Rキャリパーマウントボルト:660円

消費税:10,590円
総費用:142,920円

ブレーキキャリパー次回OH予定:2020年12月
ブレーキマスターシリンダー次回OH予定:2020年12月