よく動く純正水温計2015年の秋口あたりから、水温計の針が派手に動くようになった。左側に掲載した一例のように、指針がC側と水平(適温表示)の間をビクビクと振れる。普段、あまり動かないメーターが動き回ることから、何かしらのトラブルを抱えているようだ。計器回路の故障なのか、後述する走行状況おいて水温が低下したようにC側に傾き、オーバークールの挙動を示すことから、冷却回路のトラブルなのか。その他、見慣れない動きをされると、非常に目障りという視覚的な問題もある。さっそく原因の追究、処置を行うことになった。

状況を再チェック

エンジン

夏冬問わず、冷え切っている状態から始動し、暖機運転がスタート、回転数は1,600rpmまで立ち上がる。長い暖機運転が続くようなことはなく、規定アイドリング回転数の800rpm前後まで滑らかに低下する。ヒーターからの熱風が出て水温が正常に上がっていることから、EACVの動作は異常なし。ハンチングや息継ぎといった症状も起きていない。ダイアグノーシスによるエンジンチェックランプの点灯及びエラーログはなし。


純正水温計の動き

冷えている状態ではC側だが、暖機運転が継続中で1,000rpmを上回る状態ながらも、早くも水平=適温を示す。ところが、すぐにC側に落ちて再び水平表示に戻る…といったように、指針が跳ね回り続ける。

規定アイドリングの回転数が800rpm前後になったとき、水温計は水平を示す。この状態から走行を開始すると、水温計はC側に傾き始め、水温が下がったような表示をする。特に冬場、ヒーターを開いてブロワーをONにすると、C側に大きく傾いてしまい、典型的なオーバークール気味の挙動を示す。このとき、吹き出てくる風は熱く、車内暖房はしっかり効いている。ヒーターを閉じた状態での走行でも、C側に若干傾く。

C側に落ちたままでもしばらく走り回り、一旦停車をすると水平表示にゆっくり戻るが、そのまま走行を再開するとまたC側に傾く。

ハイカム領域を多用するような走り方をすれば水平表示が維持されるが、僅かなアクセルオフ(エンジンブレーキ)でさえ、待っていたかのようにC側へ。このやろ!

外気温が高い夏場では、冬場ほどの振れや動きはないが、エンジンブレーキを使うと水温計は落ちる。特に標高の高い山からエンジンブレーキを多用して降りてくると、麓側に到着するころにはC側表示となっている。


その他の条件

5thギアを0.848から0.787へハイギアード化し、巡航速度に対するエンジンの回転数を抑えているので、発熱量が低下している。ラジエター、ラジエターキャップ、サーモスタットは全て純正品を使用。但し、サーモスタット本体は、ラジエターキャップの不具合linkにより過剰圧力状態に追い込んでしまい、閉じなくなった可能性がある。


…と、水温計が下がってしまい、水温が落ちたように見えるトラブルの現状を羅列してみた。サーモスタットの閉じ不良の可能性は否定できないが、その一方で針がC側に落ちつつも、エンジンの暖機は正常に終了し車内暖房は効くという点も怪しい。エンジンやヒーターの実使用と水温計の表示が合致しないことから、そもそも水温センサーは正常に機能しているのだろうか。水温センサーの経年劣化の可能性も疑われるようになった。

エンジン本体の水温センサーとは?

メーターパネル内に水温計が備わっている以上は、どこかに水温センサーが存在する。サービスマニュアルや回路図上では、ただそこにセンサーが存在することだけが示されており、取り扱いや点検方法についての記載は見当たらなかった。

2本の水温センサー

水温センサーはエンジンヘッドの側面に組み込まれており、スプールバルブの真下にある。水温センサーは2本あって、手前はECU用、奥がメーター用となっている。

メーター用の水温センサー回路は単純で、電源からメーター内の水温計を経由し、この水温センサーを通じてグランドに接続されている。水温の変化を電気抵抗に変換する、サーミスタそのものだ。水温センサーがエンジンブロックにねじ込まれることでグランド接続が成立することから、水温計用のケーブルは1本だけとなっている。

ECU用の水温センサーは、2本のケーブルが繋がる。VTECのハイカムとローカムの切り替えは、冷却水が適温になっていることが条件の一つで、ここで水温を読み取って判断している。つまり、エンジンが冷え切っている状態で6,000rpm以上回してもカムは切り替わらない。その他、水温センサーの不良やコネクタの接触不良が発生すると、やはりカムが切り替わらない症状が発生し、さらにはエンジンの始動性が悪化することがある。

センサー交換…同時に冷却水も交換

夏場の冷却水定期交換のタイミングに併せることになった。冷却水を抜くことから、メーター用とECU用の2つの水温センサーを同時交換するには都合がいい。先述したようにラジエターキャップの不良linkによるダメージも視野に入れて、サーモスタットも交換。

パーツ図面その1
 3.  19301-PAA-306  サーモスタットASSY.  1,922円  1個
 10.  37750-PH2-014  サーモユニット(ND)  2,754円  1個
 12.  37870-PJ7-003  センサーASSY.,ウォーターテンプレチャー  3,240円  1個
   08CLA-G010S1  ウルトラeクーラント  4,536円@1,512円  3L

取り外された2本のセンサー

取り外された2本の水温センサー。上がECU用、下がメーター用。ストックしてある予備品と比べると、新品は真鍮を彷彿とさせる色をしているが、経年で黒くなっている。ECU用水温センサーは先端が白くなっており、汚れが堆積していた。メーター用水温センサーは見た目が黒くなっただけで、それ以外の異常はなかった。室温27℃における抵抗値は1.5kΩで、恐らく正常。サーミスタの経年劣化で、水温の上昇に伴う抵抗値の変化にバラつきが生じ、指針を派手に動かしていたのかもしれない。

装着済みのセンサー

エンジンヘッドにねじ込まれた2本の水温センサーは金色に輝いており、新品になっていることを静かにアピールしていた。暖気後にエンジンを止め再始動すると、水温計の針は素早く立ち上がり、見たことがない速さだ。針の振れも無くなっており、明らかに水温センサーの経年劣化だったようだ。

過圧に耐えたサーモスタット

取り外されたサーモスタットには、筋状の傷が見つかり、中心軸が若干ズレていた。予想どおり、ラジエターキャップの不良で冷却回路に過剰な圧力が掛かり、曲がってしまったようだ。

湯煎テスト

中心軸がズレた状態で、弁は正常に動作するのか。テストしてみると、水温が75℃に達したあたりからゆっくりと弁が開き、冷やすとすぐに閉じる。このことから、サーモスタットの動作そのものは良好だった。中心軸がズレていたことが判明したことで、将来の故障リスクを考えるなら、今回の作業で交換して正解だった。

オイルクーラーのOリングが劣化して…

もう一つのトラブル。相変わらずオイルパン周辺が湿っていて、僅かながら駐車場に茶色の染みが残り、雨の日は虹色のオイル跡が広がることから、まだどこかでオイルが漏れている。くまなく調べたところ、純正オイルクーラー付近から、滲むようにして漏れていた。

B型エンジンのオイル漏れしやすい部分として、スプールバルブのパッキン、カムエンドシール、ブリーザーチャンバーのパッキンがある。その他、事例は少ないようだが漏れるポイントはもう一つあり、純正オイルクーラーからの漏れだ。純正オイルクーラーは冷却水を一部バイパスする水冷式で、冷却だけでなく油温を下げすぎないようにするウォーマーとしても作用する。

純正水冷式オイルクーラー

エンジンブロックとオイルエレメントに挟まれるようにして、水冷式オイルクーラーが装着されている。写真のように白い円筒形のオイルエレメントの根元で、銀色に光るのが水冷式オイルクーラーだ。B16B及びB18C(R)は装着、B16AではEF系は装着、EG系、EK系だと非装着と、グレードや型式での差が激しい。高回転まで回すB型エンジンは油温が上がりやすく、特にスポーツグレードとなるタイプRでは、油温にも配慮がされていることが分かる。

オイルクーラーからのオイル滲み

オイルクーラーとエンジンブロックの接合面はOリングで密封されているが、経年によりオイルが漏れるようになる。B型エンジンの数あるオイル漏れポイントの視点からすれば完全な盲点で、タラタラと滴るようには漏れず、時間を掛けてゆっくりと滲むように漏れることから、他の部分からのオイル漏れと勘違いしやすい。写真ではオイルクーラー上部から滲み出しており、油特有のテカテカした光り方をしている。

パーツ図面その2
 9.  15400-RTA-003  カートリッジ,オイルフィルター  1,296円  1個
 22.  91316-PE7-730  Oリング 62.4X3.1  199円  1個
   94109-14000  ワッシャー,ドレンプラグ14MM  37円  1個
   Mobil1  5W-40  4,004円  1個

オイルエレメントを取り外す必要があるため、オイル交換のタイミングに併せている。部品代は安価だが、作業性が極めて悪い場所で、洗浄作業も同時に行うことから工賃は高い。エンジンオイルは、普段使っているMobil1 5W-40を持ち込んでいる。

作業後のオイルクーラー周辺

Oリングの交換に伴い、オイルクーラー周辺をしっかり洗浄し、漏れたオイルを落としている。油まみれだったオイルクーラーがきれいになり、銀色に光っている。取り外されたOリングは完全に潰れてしまい、同時に硬化を起こしていて密封性が悪くなっていた。

水温センサーを交換したことで、水温計の針がビクビクと振れる挙動は完治。走行で水温が落ちるように見えていたのは、冷却回路のトラブルではなく、水温センサーの経年劣化、計器回路上のトラブルだった。水温センサーの交換後は、常識的な運転においては指針がHとLの中央部分を示したままになり、不安定な挙動は一切なし。冬場の完全暖機後でも指針は真ん中を示し、巡航時やエンジンブレーキのときにC側に傾くことはなくなった。製造から18年に渡って、加熱と冷却という過酷な環境に晒され続ければ、動作不良が起きても不思議ではない。純正水温計に備わる『水温が適温か否かを表示する』機能は、完全に復活した。

経年によるオイル漏れが続いた。最大の反省点は、ブリーザーチャンバーのパッキンとオイルクーラーのOリングの交換は、同時に行うべきだった。エンジン本体からオイルが外に出入りする部分は限られており、ある部分の密封が悪くなってオイルが漏れているようならば、他の密封部分も同じように寿命を迎えていることになり、一気に手をつけないと修理に次ぐ修理で、モグラ叩き状態に陥ってしまう。そうならないためにも、これからは工賃が高額になっても、まとめ作業を依頼するよう心がけたい。オイル漏れの修理を繰り返し、一連の漏れやすいポイントを把握したことから、日ごろの点検項目に含めることになった。EK系シビックのB型エンジンは、車体をジャッキアップすることなくオイル漏れの目視点検が行えるので、今後は早い段階で異変に気づくことができるだろう。

走行距離:230,170km

冷却水関係部品交換工賃合計:12,960円
部品代合計:12,646円

オイル漏れ関係部品交換工賃合計:15,120円
部品代合計:5,536円

ミッションオイル(ウルトラMTF-III):2,750円
ショートパーツ:37円
ミッションオイル交換工賃:3,240円

総費用:56,472円(内、消費税:4,183円)